蝶ヶ岳山行報告
NO.
日付
山名
参加者
会員 障害者(視障)
9名
健常者
20名
1
平成17年8月19日〜21日 蝶ヶ岳 合計 30名
+2名
会員外 障害者
0名
健常者
1名
+2名
  コースタイム:8/19 上高地(13:30)…明神(15:10,15:20)…徳沢(16:30)
         8/20 徳沢(7:10)…2,135m(10:40 後発と合流)…長塀山(13:20)…
             蝶ヶ岳(15:00)
         8/21 蝶ヶ岳ヒュッテ(6:10)…長塀山(7:10.7:25)…
             徳沢(11:30,11:40)…上高地(13:10)
天候:
8/19 曇り一時雨後晴れ
8/20 曇り後晴れ
8/21 霧後曇り一時雨

★8月19日
 今回は、徳沢までの人や夜行で来る人、蝶ヶ岳まで登る人、他にもいろんなケースの人がいて、人数把握が難しかったが、途中乗車の人たちも、全員揃って上高地に到着した。
 今回は、山野井泰史さんと妙子さんご夫妻に参加していただき、山の話をお聞きすることが一番の楽しみだ。

 歩き始めると、すぐに雨が降り始め、雨具を付けることになってしまった。河童橋を渡り梓川の右岸にある遊歩道を歩く。ハンゴンソウやオタカラコウがたくさん咲き、ノコンギクやキツリフネ、サラシナショウマも少しだが咲いていた。木道や車道を歩き、明神橋を渡って明神で休憩。雨もほぼ止み、雲も薄くなってきたようだ。
 山野井さんご夫妻にも視覚障害者のサポートをしていただいたりしながら、徳沢を目指す。雨雲も去り、梓川上流には青空が広がってきた。今日の宿泊場所、徳沢ロッジに着くと、涸沢から降りてきたNさんと合流する。ロッジでは、風呂に入ることができ、上高地から歩いてきた汗よりも、家から新宿までの汗を流す。
 食事が終わってから、部屋に全員集まって山野井さんの話を聞く。ギャチュンカンで雪崩にあった時の話は、どうしてそんな極限状態でも淡々と帰る作業を進めることができたのか、山野井さんご夫妻の精神力の強さに、ただ感心するばかりだった。
 アルコールも程ほどに、話の後は、すぐに部屋で眠りにつく。

★8月20日
 体力的に自信のない人もいるので、今朝上高地から登ってくる人たちより先に出発することにする。後発の人たちとの合流を考え、Nさんに徳沢で待っていてもらう。
 徳沢の草原を抜け、いきなりの急登にかかる。長塀山(ながかべやま)まで延々続く急登だが、まずは2,000m付近にある平坦地を目指して登る。後発の人たちとは、無線で交信し、高度計の標高でお互いの位置を確認しあう。途中で、山野井さんは、目をつぶって奥さんからサポートしてもらっていた。実際に見えなくて歩く感覚を感じようとする山野井さんに、驚いてしまった。
 平坦地には、タケシマランの赤い実があり、写真に収める。すでに後発の人たちはすぐ近くに来ているようだ。ここから、少し登ると、後から数人の人たちが登ってきたので、「ヤッホー」と声をかけたが反応がなく、違うパーティーだった。さらに、しばらく進むと、今度こそ、下からにぎやかな声が聞こえる。2,135m付近で、合流し、数年ぶりであったかのように、にぎやかに再会を喜び合う。

 ここから、右側にトラバースするようになると、ようやく傾斜が落ちてきて、登りも楽になる。山野井さんに代わる代わるサポートをしていただいたり、歩きながらいろんな話をしながら登っていく。
 途中2,480mの標高点にも気づかず、緩やかに登っていくと、長塀山の山頂に飛び出した。ここからは時折現れるニ重山稜や湿地を通過していく。途中で昼食を取り、妖精の池に飛び出すと、一気に高山植物が増えてくる。ハクサンフウロ、ミヤマアキノキリンソウ、コウメバチソウ、ヒメコゴメグサ、クルマユリ、エゾシオガマ、トリカブト、ムカゴトラノオなどなど。さらに登って森林限界に来ると、タカネヤハズハハコやイワギキョウなどさらに増えてくる。行く手には、今日泊まる蝶ヶ岳ヒュッテも間近に見えてきた。振り返ると、一瞬だが、涸沢が見えた。
 山頂で記念写真を撮り、ヒュッテに向かう。ヒュッテで、ビールで乾杯し、Mさんが買ってきてくれた4本のワインもあっという間になくなってしまった。外に出ると、薄くなった雲の向こうに穂高連峰が何とか見えていた。
 ヒュッテには、名古屋私立大学医学部の方が、ボランティアで診療所を開いていた。Aさんは、高山病の治療をしてもらい、元気になって帰ってきた。夕食の後は、山野井さんを囲んで、山の話しに花が咲く。お疲れのところ、お二人には、お世話になりました。お二人の話の後は、食堂でさっきの医師のたまごたちが、高山病などの講習会を開いてくれた。それをうつろな頭で聞き、終わると共に眠りについた。夜、外に出てみると、星空が広がり、北穂の山頂には、北穂小屋の灯りがよく見えていた。

★8月21日
 昨晩の星空に好天を期待したが、朝起きると一面のガスの中。
 山野井さんは、小屋の中でも普通に視覚障害者の人たちのサポートをしている。初めて視覚障害者の人たちと接する人には、どのように接したらよいか分からない人が多いのに、やはり極めて困難な岩壁を当たり前のように登っている人だから、サポートも当たり前だと感じられるのだろうか。どちらにしても、山仲間アルプが実践したいこととしっかりと通じているように感じた。

 朝5時に朝食を取り、早めに出発する。ハイマツ帯を抜け、お花畑を歩くと、すぐに妖精の池に着いた。さらに、緩やかな道を下り、こんなところをよく登ってきたねといいながら、急な道を慎重に下っていく。梓川の白い河原が次第に近づき、ようやく足下に徳沢園の赤い屋根が見えてきた。徳沢園の前のベンチで、ホッと一息。ここで待っていてくれたSさんとYさんが合流する。カメラマンのWさんが、業務用に止めてある車に乗りたい人がいたら乗せてくださるという。疲れている人を中心に乗せていただく。

 アルペンホテルでお風呂に入りたいため、少々ペースをあげて上高地を目指す。バスの乗車券を確保するため、TさんとHさんは先を急いでバス停まで行ってくれた。河童橋の前で、車で送ってもらった人たちと合流し、さらに蝶ヶ岳に登らなかったTKさんのグループと合流して、河童橋をバックにカメラマンのWさんから記念写真を撮っていただく。
 あとは、アルペンホテルで汗を流し、ビールで乾杯。私は、Nさんから寄付していただいた本「共に楽しむ」を山野井さんとWさんにプレゼントさせていただく。上高地から松本まで直通の路線バスは、ちょっと羽目を外しすぎてしまい、反省点を作ってしまいました。いろいろありましたが、みなさんの協力のおかげで、30人もの大勢の方に参加していただき、事故もなく安全に、山野井さんご夫妻との初めての山行を楽しむことができました。みなさまのご協力に心から感謝いたします。

記:網干

2005年度活動報告(山行)に戻る