子ども登山教室スタッフ養成総合講習(甲斐駒ヶ岳)山行報告
NO.
日付
山名
参加者
会員 障害者
1名
健常者
3名
1
平成22年9月18日〜19日 甲斐駒ヶ岳 合計 4名 会員外
(賛助員含む)
障害者
0名
健常者
0名
  コースタイム:
9/18 竹宇駒ヶ岳神社(9:35)…笹の平分岐(11:45)…刀利天狗(14:00-14:10)…
    五合目(14:50-15:00)…七丈小屋(16:00)
9/19 七丈小屋(5:20)…八合目(6:05-6:15)…甲斐駒ヶ岳(7:40-8:10)…
    駒津峰(9:40-10:05)…双児山(10:40-10:50)…北沢峠(11:50)
天候:
9/18 晴れ後霧、
9/18 晴

★9月18日
 今回は、子ども登山教室スタッフ養成事業の総合講習として、岩場の通過と体力づくり、ペース配分などを主体として甲斐駒ヶ岳で実施した。

 小淵沢からタクシーで竹宇駒ヶ岳神社手前の駐車場まで入る。ここで登山届けを提出し、歩きはじめる。今日は、Tさんに先頭で歩いてもらうことにする。神社を過ぎ、尾白川にかかる吊り橋を渡って、登山道へと入っていく。

 今日の登りは、標高差で約1,600m、明日は約600mの登りだ。アルプス3大急登など有名な登りがあるが、全体で2,200mの標高差を持つ尾根は、ここと剣岳の早月尾根くらいではないだろうか? とにかく、体力づくりと自分の体力を確かめるには、もってこいの尾根だ。

 Tさんが先頭で登り始めたが、少しペースが速いなと感じた。しかし、今回のメンバーが強いことと、バテてつぶれてしまうほどのペースではないため、口出しせずに自分の考えで登ってもらう。

 鬱蒼とした樹林帯をひたすら登っていく。トラバースして尾根に出て、かつてあった尾白川へ下りる道の跡を通り過ぎ、さらに尾根を登っていくと、横手駒ヶ岳神社への分岐である笹の平分岐に到着した。竹宇駒ヶ岳神社で高度計を合わせてきたのだが、どうも100mほどずれている。このあとも、50mのずれになったり、100mになったりと、どうも地図がいい加減なのではないかと思われた。

 分岐の少し上の明るいところで昼食を取り、さらに登っていく。八丁登りの急な尾根を登り、さらに行くと、有名な難所の刃渡りとなる。ここで固定ロープの練習をしようと思ったのだが、しっかしと鎖の手摺りが付いていて、拍子抜けのため、止めてそのまま登ることにした。しかし、その後も痩せ尾根が続く。ハシゴが出てきたり、桟道が出てきたりとぐいぐい登っていく。

 かつて修験者が登ったこのコースには、至るところに祠や剣のようなものがある。刀利天狗にもたくさんあった。刀利天狗からは、黒戸山を巻いて五合目へと通じている。少し下った鞍部に五合目小屋の跡がある。小屋跡の下の斜面には、空き缶などが山のように捨てられていた。かつて小屋があった頃に捨てられたものだろうか? よい山なのに残念でならない。

 さらに少し下ったところに屏風岩があり、そこの右手から、長いハシゴが伸びている。みんな疲れが出てきて、もううんざりというところだ。気持ちを整えて登っていく。しかし、その上も、次々にハシゴが現れる。これでもかと続くハシゴをがんばって登っていくと、ようやく七丈小屋に到着した。テントの受付をし、水を満タンにして上のテント場まで行く。下のテント場は16張りほど張ってあり、上のテント場で張ることにする。ここもすでに10張り以上張っていていっぱいだったが、一番隅に張らせてもらった。今回は、4人用テントに男3人が入り、ゴアのツェルトに女性のTさんに入ってもらう。

 Sさんが何とステーキ用の肉や、野菜などを持ってきてくださり、さみしいはずの夕食もしっかり豪勢なものになった。

 この付近は、完全に雲の中に入っていて、景色は見えず、少し冷たいものも感じられた。すきま風の入るツェルトに一人で寝るTさんが寒くないか心配だったが、ほっかいろが威力を発揮して眠れたそうだ。

★9月19日
 3時半に起きると、すばらしい星空だった。今日の展望に期待が高まる。他のテント組も半数くらいが起きて朝食や出発の準備をしている。我々も、小屋まで下りて用を足し、出発する。今日は、Sさんに先頭で歩いてもらう。今日も急な登りで始まる。ハシゴや鎖も何度か出てくる。

 登り始めて20分くらい経ったころだろうか、東の空に真っ赤な太陽が上がってきた。すりガラスのような雲を通して見るせいだろうか、周囲に光を放つのではなく、丸い形が良く分かる太陽だ。

 朝日を浴びて登っていくと、八合目御来光場に到着する。ここから見る甲斐駒ヶ岳は、駒津峰側から見る感じと大きく違って、かなり黒々とした迫力ある山容だ。山頂の真下には、赤石沢奥壁が広がっている。昨日テントで泊まった人の中にもここの赤蜘蛛ルートを登る人がいたが、もう取り付いただろうか?

 八合目を過ぎると、これまで以上に鎖場が連続するようになる。垂直に近い鎖場や足が届きにくい高さの岩場などを通過し、岩溝のような所をぐいぐい登っていくと、9合目付近だろうか、剣の立つ岩の上に人が立っているのが見えた。その下まで登っていくと、逆相の急な岩で、ちょっと登る気にならなかった。ザックを背負ったまま登っている人もいたが、元気な若者だ。

 連続した鎖場も、そろそろ終わり、右手には山頂の祠も見えてきた。ザレの混じった岩場を登っていくと、山頂手前のピークに真新しいコンクリート製の祠があった。山頂はそこから5分もかからない。

 ようやくたどり着いた山頂は、人でごった返していたが、重い荷を背負って長い登りをがんばって着いた山頂は、大きな達成感に満たされた。展望は、当然360度。隣の仙丈ヶ岳から北岳、間ノ岳、塩見岳、荒川東岳、鳳凰三山、雲海の上に奥秩父、八ヶ岳、蓼科山、そして、手前の鋸岳の後には、北アルプスの山々が見える。さらに、乗鞍岳、御岳、中央アルプスと続く。富士山は、朝のうち見えていたが、霞がかかってうっすらとしか見えなかった。しかし、北岳は、バットレスが急角度で切れ落ちていて、まさに南アルプスの貴婦人の名にふさわしい山だ。

 岩のお立ち台の上で写真を撮ってもらったり、記念写真を撮ったりして、名残惜しい山頂を後に下山にかかる。下りは、摩利支天側からのトラバース道ではなく、直登コースを下ることにする。

 ざれたところを下って、岩場の連続する尾根にかかる頃、TさんとYさんがライチョウの声を聞いたという。耳をすましたら、確かに聞こえる。ふり返ると、尾根の左側の岩場に5羽ほどいた。体は大きいものの、まだふっくるぼんやりしている感じで、今年生まれた若鳥らしい個体もいて、みんな一つの家族かと思われた。鶏冠の付いた雄は1羽だけだった。

 ここから岩場の連続する尾根を下る。最後の岩場は、垂直に近いクラックの走る岩場で、登ってくる人の大渋滞となっていた。なかなかとぎれないので、お願いをして15人くらいが上った後で下らせてもらう。

 六方石で休憩し、痩せ尾根を駒津峰に向けて登っていく。足下には、コケモモの赤い実がたくさんなっていた。ふり返ると、真っ白な甲斐駒が、三角錐の立派な姿で佇んでいる。今日は最高の天気に恵まれた。

 満員の駒津峰山頂を後にして、双児山方面に下る。こちら側は、今までの混雑とはうって変わって、かなり静かなコースだった。最後の登りをがんばって双児山に立つと、たおやかな丸い山頂の駒津峰の向こうに甲斐駒ヶ岳がわずかに頭を出していた。ここからは、樹林帯の急さかをぐんぐん下る。

 標高差600mをちょうど1時間で下り、北沢峠に到着した。13時5分発のバスの時間までまだ1時間もあるため、長衛荘の前でゆっくりとくつろいだ。

 これだけハードな山をこなし、来年度の子ども登山教室に向けて、自信を持ってもらえたのではないだろうか? 力強い若手スタッフに期待と感謝の気持ちでいっぱいです。

記:網干

2010年度活動報告(子ども登山教室スタッフ養成事業)に戻る