第5回自然と親しむ子ども山登り教室(蝶ヶ岳)山行報告
NO.
日付
山名
参加者
会員 障害者
2名
健常者
9名
1
平成23年7月30日〜8月1日 蝶ヶ岳 合計 11名 会員外
(賛助員含む)
障害者
0名
健常者
0名
  コースタイム:
7/30 上高地(13:25)…明神(15:15-15:30)…徳沢(16:30)
7/31 徳沢(7:10)…横尾(8:25-8:50)…稜線(13:05)…蝶ヶ岳ヒュッテ(13:50)
8/1 蝶ヶ岳ヒュッテ(6:20)…蝶ヶ岳(6:30-6:45)…長塀山(7:55-8:05)…
    2000m(10:05-10:15)…徳沢(12:00-12:40)…上高地(14:30)
天候:
7/30 曇り後雨、
7/31 曇り後雨後霧、
8/1 晴れ後霧後雨

★7月30日
 今回は、第5回自然と親しむ子ども山登り教室の最後となる蝶ヶ岳だ。天気予報があまりよくないのが気がかりだが、K君は、星座早見盤を持ってきて、自由研究の課題にするのだと張り切っている。何とか、少しでも晴れ間が出てほしいと願い、上高地に向かう。

 上高地は、曇り空で穂高連峰などは見えないものの、雨はふっていなかった。観光センターで昼食を取り、準備をして出発する。

 まずは、河童橋で記念撮影。子どもたちは、橋の下に下りて沢で少しだけ遊ぶ。今日は梓川右岸を歩くことにする。上高地らしい豊かな緑と、緩やかな沢の流れが美しい。沢の中にいる岩魚を探したり、花を見たり、蝶やキビタキを探したりしながらゆっくりと歩く。

 明神を過ぎて、徳沢に向かっていると、サルが現れた。1頭でいるわけはないと思っていると、少し歩いたところで、数頭が林道に出て歩いている。この付近にいつもいるサルの集団だった。

 徳沢ロッヂまでもう少しというところで、雨がふりだした。少し強くなってきたので、カッパを着て歩く。徳沢ロッヂでは、すぐに風呂に入ってゆっくりする。YさんやTさん、Fさんが、子どもたちとトランプをして遊んでくださる。本当にありがたいスタッフです。

★7月31日
昨晩は、残念ながら星が見えなかったが、今朝は曇っているものの、予報では午後から雨なので、予定どおり横尾まで行って、そこから蝶ヶ岳を目指すことにする。

 センジュガンピやソバナなどの花を見ながら歩く。オオルリがよく見えるところでさえずるサービスもしてくれた。写真大好きのK君は、うまく写真を撮ることができただろうか?

 横尾に着く手前で雨がふりだした。ただ、空には青空も見えている。こんな時は、雲の高さが高い積乱雲などが中心のため、雷には要注意だ。予定どおり登るが、雷の音には、耳を凝らすことにする。

 横尾からの登りは、徳沢からの登りに比べて、非常に急で、途中で傾斜が緩くなるところがほとんどない。子どもたちががんばれるか、様子を見ながら登る。

 槍見台に着いたが、槍は全く見えない。そして、この頃から本降りになってきた。Sちゃんは、暑いというので、熱中症を心配し、雨具のジャケットに腕を通さず、頭からザックと一緒にかける方法で登る。

 本降りになってからしばらくすると、登山道は沢のように濁った水が流れるようになる。雨の様子や子どもたちの様子、大人の様子などを見ながら、状況によっては、引き返すことも考えておいた。

 標高2000m付近からMさんが遅れはじめたものの、子どもたちは元気に登っているようだ。もう少し登ったら、下るよりも登って蝶ヶ岳ヒュッテに行った方が早い状況になるため、様子を見つつも、登っていく。

 かなり激しく降った雨は小降りになり、2400m位では止み霧に変わった。Sちゃんは寒くなったということなので、上半身に着ているものを全て脱いで、朝、暑くて脱いだ長袖の上着を直接肌の上に着て、その上に今脱いだ半袖のシャツを着てもらう。そしたら、暖かくなったということで、ホッとする。ただ、少し頭が痛いようで、小屋に着いたら体温計で体温を測ってほしいという。

 後のグループがなかなか登ってこなかったが、重いザックを背負っていたK君の荷物を分担していたようだ。

 少し登ると、森林限界に到着し、すぐ先に稜線を歩く人たちが見えた。みんなにすぐそこが稜線であることを伝える。

 稜線に到着し、霧の中を歩いていると、ライチョウが2羽現れた。子どもたちにライチョウを見せてあげることができて、本当に良かった。そして、槍ヶ岳の神様と穂高岳の神様に、「子どもたちにご褒美を」と心の中で願った。

 稜線を歩いていると、すぐに蝶ヶ岳ヒュッテが見えるはずだが、今日は全く見えない。しかし、大きな株のチシマギキョウの写真を撮ったりしながら、歩いていくと、人の声が聞こえはじめ、目の前にぼんやりと山小屋の屋根が見えた。いろんな心配はあったが、全員無事に蝶ヶ岳ヒュッテに到着した。

 受付を済ませ、私たちは11人で一部屋を使わせていただくことができた。TさんとYさんの取り計らいで、Sちゃんの診察をしていただき、体温も血中の酸素濃度も問題ないことが確認できた。ただ、Sちゃんはまだ頭が痛いとのことで、自分から申し出て再度診察を受け、酸素吸入をしていただいたら、かなり楽になったようだ。

 夕食後、外に出てみると、雲の切れ間から穂高連峰が見えた。まだ食事中だったK君やSちゃんに声をかけると、K君が出てきて、写真を撮っていた。

★8月1日
夜中に何度か外に出て空を見たが、星は見えず、K君の課題の役に立てないなと思っていたが、3時半ころNさん、K君と一緒に起きて、外に出てみると、わずかだが、星が見えた。カシオペア、オリオン、牡牛座、スバルなどが分かる。南東の上空に光るオレンジ色の星は木星だと思うが、どうだっただろうか? 槍穂高連峰もよく見えていた。

 4時半ころ再度外に出て、日の出を待つ。雲海の上に槍穂高連峰が浮かんでいる。遠くには富士山や八ヶ岳、乗鞍岳、御嶽も見える。隣の常念岳から大天井岳などもよく見える。日が昇る東の方は、大雲海が広がっている。昨日、願いをかけた槍穂高の神様が、子どもたちにご褒美をくれたのだろうか。神様に感謝します。

 東の空に点のように光った御来光は、あっという間に姿を現し、周囲は太陽の光で満たされた。それと同時に、雲たちも活動を始め、次第に上に上がってきて、槍穂高を隠し始めた。日が昇ったあと、5時にはヒュッテの食堂に並び、1番で朝食にありつけた。

 朝食後、出発準備をして外に出ると、2重のブロッケンが見られた。30年以上山に通っている私も、2重のブロッケンにははじめて出会った。子どもたちも、めずらしい現象を見られて、貴重な体験になったのではないだろうか。

 ブロッケンを楽しみながら、蝶ヶ岳の山頂を目指す。後をふり返ると、蝶ヶ岳ヒュッテと常念岳、それに表銀座の山などが雲と戯れているように見える。

 山頂で集合写真を撮り、下山にかかる。ハイマツ帯からハクサンイチゲやチングルマなどが咲くお花畑へと下っていく。クロユリも咲いていた。

 K君とSちゃんは、Yさん、Tさんと一緒に下ってくる。すっかり、Yさん、Tさんに懐き、安心して歩いているようだ。

 妖精の池には、ハクサンチドリやテガタチドリなどが咲いていたが、以前よりお花畑の規模が小さくなったように感じたが、私の気のせいだろうか?

 妖精の池から緩やかに下り、一登りで長塀山に到着する。妖精の池でも多かった虫は、ここでも多かった。

 登山道には、卵のような形をしたキノコがあったが、少し歩いたところにベニテングタケが生えていたので、そのキノコもベニテングタケだったようだ。キノコなどを楽しみながら下り、標高約2000mの平坦地で休憩し、ここからは一気に徳沢に下ることにする。

 しばらく下り、後が遅れているようなので、待つことにする。なかなか下りてこないので、「おーい」と何度か呼びかけ、Fさんが呼んだ時に、Tさんの返事があった。

 非常に慎重に下っているなと思ったが、上の方でK君が岩で足を滑らせ、数メートル転がってしまったため、少し休み、様子を見てから下ってきたとのことだった。K君は、頭にたんこぶを作り、腰が痛いとのことだったが、意識はしっかりしていて、気持ち悪いようなこともないという。ただ、頭に軽く触っても「痛い」と言うので、しっかりと様子を見ながら歩くことにする。

 K君とSちゃんには、前のほうに来てもらって、様子を見ながらゆっくり下ることにする。K君は、ゆっくりだが自力で下りている。下の方には、梓川の河原がはっきり見えるようになり、徳沢園の赤い屋根も見えてきた。滑らないように最後まで気をつけて下り、ようやく徳沢に飛び出した。

 私も、子どものころは何度も頭にたんこぶを作ったので問題ないと思ったが、やはり頭が痛いとのことなので、徳沢にある日本大学医学部の診療所に行って、診断していただくことにした。診断結果は、問題なしだが、3日間くらいは、頭の内部で出血が起きないか注意する必要があるので、何か様子がおかしかったら、脳神経外科を受診するようにということだった。先生が、転がった時は怖かったかと質問すると、K君はおもしろかったと答えるところが、大物になりそうだなと感じた。Sちゃんも一緒に先生の話を聞き、泊まった宿の名前など、K君が答えられないことをしっかりと代弁していた。

 徳沢から明神を経て、上高地まで歩くが、予定より時間がかかり、帰りが遅くなりそうなので、上高地でのお風呂はあきらめ、できるだけ早いバスで帰ることにする。それでも、松本発のあずさは、16時35分発となってしまった。

 帰りが遅くなり、子どもたちは相当疲れたと思うが、激しい雨や厳しい体験、さらにいろんな高山植物やライチョウに出会ったり、2重のブロッケンを見たり、御来光と大展望を見られて、K君もSちゃんも大きく成長できたのではないだろうか?

 子どもたちのがんばりと共に、それを支えていただいたスタッフのみなさまに、心から感謝いたします。本当にありがとうございました。

記:網干

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