雲ノ平山行報告
NO.
日付
山名
参加者
会員 障害者
4名
健常者
5名
1
平成23年8月6日〜9日 雲ノ平・野口五郎岳 合計 9名 会員外
(賛助員含む)
障害者
0名
健常者
0名
  コースタイム:
8/6 折立(8:00)…三角点(10:0-10:15)…五光岩ベンチ(12:00-12:25)…
   太郎平小屋(13:10)
8/7 太郎平小屋(5:50)…左俣出合(8:15)…薬師沢小屋(9:40)…木道末端(14:20)…
   雲ノ平山荘(15:50)
8/8 雲ノ平山荘(4:40)…雷岩(5:05-5:50)…祖父岳(7:30-7:55)…岩苔乗越(8:50-9:00)
   …水晶小屋(10:20-10:40)…東沢乗越(11:40-11:50)…真砂岳分岐(13:45-14:00)
   …野口五郎小屋(15:30)
8/9 野口五郎小屋(5:45)…三ッ岳(8:05)…烏帽子小屋(9:45-10:20)…
   2208m三角点(11:50-12:00)…高瀬ダム(15:20)
天候:
8/6 雨後曇り後雷雨後曇り、
8/7 晴れ後雨後曇り、
8/8 晴れ後霧、
8/9 快晴後曇り

★8月6日
 夜行バス富山駅に着き、電車とバスを乗り継いで、折立まで行く。雲が厚く、空模様が心配だったが、折立に着いたときは、すでに雨が降り出していた。

 登山口で雨具を着て準備をしていると、声をかけてくる人がいた。最初、顔を見ても誰かはっきり分からなかったが、六つ星山の会にいた時、一緒に山に登ったことのあるHさんだった。10数年ぶりの再会に、感激だった。お互いに頭に白いものが目立つようになったが、元気そうで、何よりだった。何か用があるようで、一緒に来たメンバーより先に下りてきて、早いバスに乗っていった。

 こちらは、自己紹介をし合い、急な登山道を登り始める。しばらく登っていくと、Hさんと同じパーティーのMさん、Tさんたちが下りてきた。Mさんとも久しぶりだが、相変わらずの毒舌で、「昨日は快晴だったけど、行いの悪い人が来たから雨になった」と言う。こちらも、「Mさんが山から下りるので、これから良くなるよ」と返す。

 雨具を着ていると、暑くて汗をかいてしまうため、雨が止んだところで雨具を脱ぐと、また降り出す。そんな状況で、降ったりやんだりの繰り返しだった。

 急登が終わり、三角点の広場に出る。ここからは、太郎平まで緩やかな登りとなる。この登山道にはキンコウカが多く、一面に咲いているところがあった。草花には、水滴がついて美しい。タテヤマリンドウやミヤマリンドウ、イワショウブなどが咲き、雨が止んだ時に写真を撮らせてもらう。

 五光岩ベンチで昼食タイムとする。一部だが霧が晴れて、五光岩やこれから向かう太郎平小屋も見えた。ニッコウキスゲの群落があったり、チングルマの綿毛がたくさんあり、ずっとお花畑だった。

 太郎平小屋に着き、乾燥室で雨具などを乾かす。食堂でくつろいでいると、外は土砂降りとなり、雷も近くでなり始めた。少し前に着くことが出来て、ホッとした。すると、Fさんの知り合いの先生が、ボランティアで小屋にいらっしゃった。話が弾み、いろいろと教えていただいた。

 今日、赤木沢に沢登りに来たHさんが、太郎平小屋に来る予定だったが、まだ着かないので、増水や雷にあっていないか心配になったが、かなり遅い時間になって到着した。

 夕方、雨が上がり、薬師岳や黒部五郎岳などが見えるようになってきた。このまま、明日は良い天気になることを願って、床についた。

★8月7日
朝、起きるとすばらしい天気だった。山の陰でご来光は見えないものの、少し薬師岳方面の木道を歩いて、槍ヶ岳を見に行った。

 今日、山を下りて、明日の会議に出るHさんと別れ、北ノ俣岳方面をトラバースしながら、黒部川を目指して下っていく。昨日の雨に濡れた木々や草花が美しく輝いている。ニッコウキスゲの群落もすばらしい。行く手には、今日登っていく雲ノ平がよく見える。水晶岳や鷲羽岳もよく見える。

 しばらく下っていくと、薬師沢に到着する。沢にかかる橋を渡り、多少のアップダウンを交えながら、クマザサ帯を下る。太陽の光に、木々についた水滴がきらきら光り、まぶしくも美しい。水場も何か所もあり、水には困らない。日本一おいしい水場だと薬師沢小屋から登ってきた人が教えてくれた。他の水場との違いは分からなかったが、おいしかった。

 右手に黒部五郎岳が見えるようになってくると、薬師沢小屋は近い。黒部川と薬師沢の両方が見える痩せた尾根を通過して下っていくと、薬師沢小屋に到着した。

 黒部川には、澄んだエメラルドグリーンの水が流れている。この川の上に付けられたつり橋を渡って、対岸に移る。足を踏み外すと大変なので、みんな慎重にサポートしている。しかし、橋を渡ってからも岩場に付けられた梯子はなかなか厳しく、慎重に2回梯子を下って、川に降り立つ。

 その先には、短いけれど手すりなどがない細いアルミの橋を渡ってから、登りにかかる。いきなりの急登で、手を使って登るほどだ。しばらく登ると、滑りやすい大きく丸い石が積み重なったようにどこまでも続く。暗い雲が広がり、空模様も怪しくなってきた。しかし、振り返ると、今朝出発した太郎平小屋が見えてきた。かなり高度も上がってきた。

 しかし、雨が降り始め、雷もなり始めた。ここは樹林帯なので、雷の心配はあまりないが、雨具を身に付けると、とにかく暑く、汗が噴き出してくる。雨の勢いも激しくなってきた。それでも標高が上がり、樹林の間から空が見えるようになってくるので、急登もそろそろ終わりなのではないかと期待をする。

 長かった急登もようやく終わり、木道の末端に到着する。このコースは登りでよかった。下りでは、滑ってかなり危険だったと思う。

 木道の末端に着いても雨はまだ強く、雷も鳴っている。しかし、アラスカ庭園に着くと、次第に雨が小降りになり、薬師岳方面や野口五郎岳方面が見えるようになってきた。歩いていると、黒部五郎小屋が、霧の中から見えるようになってきた。明日、目指す祖父岳も見えてくる。日も差してすっかり暑くなるころ、今日泊まる雲ノ平山荘も見えてきた。水晶岳もよく見える。

 奥日本庭園からの展望や池塘を楽しみながら木道を緩く登っていくと、今晩の宿、雲ノ平山荘に到着した。男性は3階、女性は2階に場所を指定された。

 外に出て、ビールを飲みながら小さな声で歌っていると、仲間に加わる人も現れた。「山の子の歌」が詳しいらしく、何度も歌っている。別なグループは、吉田拓郎が好きなんだという人がいて、その年代の歌を一緒に歌って楽しんだ。

 小屋で休んでいたら、何ととなりにいた人は、以前、山仲間アルプの会員で、先日、甘利山でお会いしたばかりのHiさんだった。今年2回も会うとは、何という奇遇だろう。今回もまた、プレゼンとをいただいてしまった。

 「山の子の歌」に詳しい人は、わざわざ私を探して、もう一度歌おうと迎えに来る。早く寝たかったが、仕方がないので付き合い、外に出て山の歌を歌おうとしたら、その人たちは「山の子の歌」以外、何も知らないという。「坊がつる賛歌」や「信濃恋歌」などを歌ってあげたら、感動して喜んでくれた。

★8月8日
3時過ぎに外に出てみると、満天の星空だった。流れ星もいくつか見られた。ところが、少し明るくなり始めた4時頃、急に全天が雲に被われてしまった。今日はいったいどういう天気になるのだろうと心配になったが、明るくなるにつれて、次第に天気は良くなった。

 今朝は、今日の長い行程を考え、朝食を弁当にしてもらった。水場への分岐となる雷岩で朝食とする。水場で水筒を満たし、少し歩くとスイス庭園への分岐があったので、立ち寄ってみる。スイス庭園は、薬師岳を間近に見ることのできるすばらしい場所だった。

 ここから、祖父岳に向けての登りとなるが、祖父岳はなかなか遠かった。ハイマツ帯に入り、東側の斜面を通り、さらに背丈を超えるくらいのハイマツ帯を超えて登っていく。

 チングルマの綿毛に付いた水滴が美しい。まるで宝石をちりばめたようだ。何のことはない草むらも、誰かの表現を借りると、「七色の虹」がまさにぴったりな表現と思える美しい水滴だった。

 間近に野口五郎岳と薬師岳、水晶岳、赤牛岳などを望み、遠くに立山と剣岳を望みながら、祖父岳の山頂を目指す。山頂に到着すると、今まで見られなかった槍穂高連峰がしっかりと見られるようになった。近くに三俣蓮華岳と三俣山荘が見え、その左には笠ヶ岳もよく見えている。鷲羽岳からワリモ岳もすぐそこに見える。すばらしい展望だ。昨日から歩いてきた太郎平周辺から雲ノ平もよく見える。

 祖父岳からの下りは、1箇所、危険なところがあり、慎重に下る。すばらしい青空だったが、次第に雲が広がってきた。今日も、夕立には要注意だ。

 黒部川の最源流部となる岩苔乗越で休憩し、ワリモ分岐に向けてジグザグに登る。分岐からは水晶小屋に向けての気持ちの良い尾根だ。水晶小屋に着くと、これから向かう野口五郎岳が真っ白に見えていた。その手前には、手ごわそうな東沢乗越への稜線が見えている。今回、一番の難所になるだろう。

 水晶小屋の下はウサギギクなどのすばらしいお花畑だった。しかし、そこを過ぎると、足下の切れた険しい稜線が続く。とにかく、三点支持などを使って慎重に通過してもらう。険しい尾根を過ぎると、今度は大きな岩がゴロゴロする、視覚障害者の人たちにとって最も厳しい尾根が続く。ここを過ぎて、真砂岳の下に着くと、ようやくホッとする。これから向かう野口五郎岳に続く登山道がよく見える。

 チシマギキョウやイワギキョウ、タカネシオガマなどがたくさん咲いている斜面を登っていくと、野口五郎岳の先の稜線に飛び出した。すでに霧に被われているが、野口五郎岳に登り、集合写真を撮る。これから向かう野口五郎小屋が霧の間から見えていた。

 野口五郎小屋は、感じの良い管理人さんのおかげで、とても気持ちよく利用させていただいた。夕食後、食堂の隅で小さめの声でみんなで青春時代の歌を歌っていると、一人の男性が歌を聞きたいと寄ってきた。聞くだけでなく一緒に歌いましょうと言ったら、「飯豊の山男」を歌ってくださった。はじめて聞く歌だったが、とてもすばらしい歌だった。その方も新潟県の出身だった。

★8月9日
朝、4時頃起きて外に出ると、すでに星の輝きが失われつつあった。それでも、Tさんが流れ星を見られたと喜んでいた。今日もすばらしい天気で、大天井岳から唐沢岳まで、スッキリと見えている。私は、5時からの朝食前に北側のピークに登って、日の出を待った。そこからはこれから向かう烏帽子岳から針ノ木岳、鹿島槍ヶ岳、そして白馬岳まで見えていた。

 朝食を取り、出発準備をしていると、小屋の管理人さんが小屋の前で私たちの写真を撮ってくださるという。気さくで親しみの持てるとても良い管理人さんだった。一晩、ありがとうございました。小屋の入口にある温度計は、5時頃、9℃を指していたそうだ。

 途中、何ヶ所か大きな岩がゴロゴロするところがあったが、先日ほどではなく、それ以外はすばらしい展望を恣に歩ける、まさに稜線漫歩の楽しさだった。

 行く手には、白馬岳までの後立山の山々と、左手には剣岳、立山、五色ヶ原、越中沢岳が見え、赤牛岳とその後に薬師岳も見えている。水晶岳と昨日登った野口五郎岳、そしてその左に槍ヶ岳が見えてきた。北穂高岳のピークも見えている。さらに、東鎌尾根と大天井岳から燕岳、餓鬼岳、唐沢岳まで、このコースは裏銀座コースだけあって展望は最高だ。

 三ッ岳へは展望コースではなく、お花畑コースを行く。最初、風がなく日当たりが強くて失敗したかなと思ったが、途中のお花畑はすばらしく、まだ残っていた雪渓で、滑って遊ぶこともできた。

 たくさんのコマクサが咲くところを過ぎ、鳥帽子ヒョウタン池の近くのテント場は、池の向こうに燕岳などが見える、すばらしいシチュエーションだ。ただ、虫は無視できないだろうな。

 鳥帽子小屋の前は、イワギキョウのお花畑だった。こんなにまとまって咲いているのは初めて見たが、花はやや終わりかけているようだった。

 小屋で昼食を取り、いよいよブナ立尾根の下りにかかる。急坂だがしっかりとした登山道を順調に下っていく。と思っていたが、予想より時間がかかり、かなり遅くなるのではないか、心配になったので、歩く順番を変え、Fさんにはザックに掴まって歩いてもらうことにした。

 少し、ペースが上がり、1時間で300mほど下れるようになった。私は足がガクガクになり始めたTuさんのサポートをして下っていく。苦しい下りをがんばり、斜面をトラバースしていくと、最後の急坂に出て、ジグザグに下る。下りきったところは、高瀬ダム湖に注ぐ濁沢だった。不動岳などの岩や泥を集めて濁った土色をしている。

 しかし、平坦地に下りてホッとして歩く。長い吊り橋を過ぎると長いトンネルとなる。そこを過ぎると、高瀬ダムに飛び出す。タクシーを呼ばなければと急いだが、タクシーが4台待っていてくれた。何でも、昨日、一緒に歌を歌った新潟県の人が、後から9人下りてくるから、タクシーを呼んでほしいと伝えてくださったらしい。おかげで、待ち時間なくタクシーに乗れ、本当にありがたかった。

 大町の薬師の湯に入って、汗を流し、さっぱりして再びタクシーに乗って、信濃大町駅に向かう。長い山旅で、さすがに疲れたが、やり遂げた充実感に満たされて、暑い暑い都会へと向かった。

 最後までがんばった視覚障害者のみなさん、そしてサポートをしてくださったみなさん、本当にありがとうございました。今年一番のビッグ山行を無事に終えることができました。

記:網干

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