第6回自然と親しむ子ども山登り教室(立山)山行報告
実施日 山名 参加者 会員 障害者 3名 健常者 11名
平成24年8月3日~5日 立山 合計 14名 会員外 障害者 0名 健常者 0名

コースタイム:

8/3 室堂(10:20)…雷鳥荘(11:00-11:15)…室堂山荘(12:00-12:40)…一ノ越山荘(13:45-14:20)
   …竜王岳(15:10-15:20)…一ノ越山荘(16:05)

8/4 一ノ越山荘(6:50)…雄山(7:55-8:30)…大汝山(8:50-9:15)…富士の折立(9:30)…
   真砂岳(10:25-10:40)…別山北峰(11:45-12:30)…剣沢小屋(13:50)

8/5 剣沢小屋(6:05)…テント場(6:30)…剣御前小屋(7:30-7:45)…称名川(9:15-9:30)…
   みくりが池温泉(10:15)

天気:

8/3 弥陀ヶ原霧、室堂から上部は晴れ
8/4 快晴

8/5 晴れ後曇り

★8月3日

 第6回目となる「自然と親しむ子ども山登り教室」の最後は、3,000m峰の立山三山の縦走だ。大人だけのグループであれば、夜行で来て、1泊2日で十分歩けるコースだが、夜行バスで来て寝不足の子どもたちには、負担が大きく体調を崩す危険があるため、余裕を見て1日目は室堂散策から一ノ越山荘までとする。

 

 タテヤマリンドウやチングルマなどが咲き乱れるお花畑を楽しみながら、みくりが池、血の海、リンドウ池と歩き、雷鳥荘から引き返す。みくりが池まで戻り、ミドリガ池を経て、日本最古の山荘といわれる室堂山荘に行き、その近くで昼食タイムとする。昼食後は、行者が修行したといわれる玉殿岩屋を見学に行く。板状節理の岩の下にできた岩小屋が玉殿岩屋だった。

 

 室堂山荘から何度か雪渓を渡り、小学校の大集団と行き交いながら、一ノ越に向けて登る。一ノ越に着くと、東側の展望が一気に開け、槍穂高連峰から表銀座の山々、野口五郎岳などがよく見える。

 

 早い時間に一ノ越山荘に着いたため、受付を済ませた後、竜王岳方面に登ってみる。チシマギキョウやイワギキョウ、イワツメクサ、タカネツメクサなどが咲き、山腹にはハクサンイチゲやミヤマキンポウゲのお花畑が広がる。ただ、風が強いため、花の写真撮影はちょっと苦労する。

 

 順調に登って富山大学立山研究所の広場に着く。ここからは、五色ヶ原や薬師岳、黒部五郎岳、槍穂高連峰などの展望が広がり、すばらしい眺めだ。ここで引き返そうと思っていたが、竜王岳まで踏み後があったため、登ってみることにする。登ってみると、表銀座や針ノ木岳などの山々が見え、さらにすばらしい展望だった。

 

 展望を楽しんだ後は、山荘に下る。子どもたちは、下りを怖がることもなく、軽やかに下っていく。あとは、山荘でゆっくりして、おいしい夕食をいただく。部屋の窓から美しい夕日が見られた。夜半にK君と外に出てみたが、満月が明るすぎて、満天の星空とはいかなかった。

 

★8月4日

 今日は、すばらしい天気で明けた。山荘から御来光は見えないが、槍穂高など北アルプス南部の山々がくっきりと見える。さらに、八ヶ岳や南アルプス、そして餓鬼岳の上に富士山も見えていた。

 

 山荘を後に、今回一番の急登になる雄山への登りをがんばる。多くの雪田が広がる室堂の風景や岩の割れ目に咲くチシマギキョウなどが楽しませてくれる。傾斜が緩くなる中間地点を過ぎ、もう一がんばりすると雄山の頂上に飛び出す。針ノ木岳から鹿島槍ヶ岳までの後立山の展望が一気に開け、最高の気分になる。子どもたちを初め、数人の人たちが雄山神社に参拝する。雄山神社からの展望は、さらに良かったことだろう。

 

 雄山でゆっくりした後は、大汝山に向かう。岩の尾根をトラバース気味に歩くが、切れ落ちたようなところはなく、順調に歩いていく。雄山から20分ほどで大汝山に着く。ここは、立山連峰の最高峰で、さすがに展望がよい。足下には黒部ダムと黒部湖が見える。剣岳も間近に見えるようになり、白馬岳もよく見えている。ちょっとしたスリルのある岩の上に立って、撮影し合う。

 

 大汝山からも岩の尾根をトラバース気味に歩き、次の富士の折立に到着する。ここは山頂への登山道がないため、山頂手前の標識のところで休む。すぐ近くに雪渓がある。その脇には、タカネヤハズハハコやヨツバシオガマなど、いろんな花が咲いている。

 

 富士の折立を過ぎると、東側に大きな雪渓が広がる内蔵ノ助カールが見える。その上には内蔵ノ助山荘もある。私たちは、カールに沿って尾根を歩き、真砂岳へと向かう。ここまで来ると、岩の尾根もザレ場となって、広い尾根になる。真砂岳からの展望も抜群だった。

 

 真砂岳から標高差で100mほど下り、最後のピークの別山を目指す。ここを登れば今日の登りはお終いだ。そろそろ疲れが出てきたようで、ペースが落ちるが、ほぼ予定時間に別山に到着する。剣岳が大きく見えるが、北峰の方がより近くに剣岳が見えるため、北峰まで行って昼食とする。

 

 正面に見える剣岳はもとより、後立山連峰や表銀座方面の山まで、展望を恣にお昼を楽しむ。Sさんからは、おいしいコーヒーまで作っていただいた。

 

 別山を後に剣沢小屋に向かうが、尾根を外れると携帯電話は繋がらないため、尾根上で、金曜日の夜、東京を出発して後を追いかけてくる後発メンバーに電話をしてみる。こちらからの電話には出なかったが、Nさんから電話がかかってきて、真砂岳の登りにさしかかっているとの連絡をもらう。視覚障害者2人に対してサポーター3人だったので、やや心配だったが、立山を超えたことで一安心した。

 

 別山乗越まで行かず、直接剣沢小屋に下るルートを行くことにする。斜面をトラバースし、急な下りへと入っていく。しかし、子どもたちは怖がることもなく、順調に下っている。

 

 途中から、登山道の横にある雪渓をすべってみようとするが、まだ少し急なため、もう少し下ってからすべることにする。別山乗越からの登山道と合流する付近からは雪渓の傾斜も落ち、滑り落ちることもないため、K君にも雪渓をすべってみることを勧める。M.YさんとSさん、Kさんも加わって雪渓を歩く。M.Yさんは、雪渓の上のK君の写真を撮ってあげている。ただ、傾斜が緩くなったため、あまりすべらなかった。

 

 キャンプ場では、今日テントで泊まるS.Yさんたちの良いテントサイトを探しながら歩く。場所が決まったところで、剣沢小屋まで下り、宿泊の受付を済ます。部屋は貸切ではなかったが、ゆったりとスペースを使えた。小屋にはシャワー室があり、時間によって男女が別れている。

 

 小屋の付近は混んでいるため、剣岳が映る池まで行き、すばらしい風景を楽しみながら無事の到着を祝う。後発組のみなさんも無事にテント場に到着し、小屋まできてくれた。剣沢小屋でもおいしい夕食をいただいた後は、ぐっすりと眠りについた。

 

★8月5日

 今日もすばらしい天気で明けた。剣岳を背に、集合写真を撮って、出発する。テント組と合流し、別山乗越に向けて登り始める。チングルマを中心としたお花畑が何度も現れ、楽しませてくれる。K君は一人で雪渓を登っている。雪の上を歩くことが大好きになったようだ。

 

 別山方面への分岐で休憩した後、お花畑の中を登っていく。チングルマやハクサンイチゲ、クルマユリ、トウヤクリンドウ、クモマグサなど、いろんな花が楽しめた。

 

 別山乗越に立つ剣御前小屋に到着し、Nさんから室堂乗越経由で下った方が傾斜が緩くて良いという提案があり、所要時間も10分ほどしか違わないため、そちらに行こうと思ったが、そちらは急な雪渓があり要注意という看板があったので、当初の予定どおり、雷鳥坂を下ることにする。

 

 雷鳥坂にはいると、室堂がよく見え、その向こうに薬師岳もよく見えている。右手には奥大日岳もよく見える。足下に咲くイワオトギリやミヤマダイモンジソウ、クルマユリ、ハクサンボウフウなどを楽しみながら、ぐんぐん下っていく。目の前には、昨日、縦走した立山三山がよく見える。

 

 ぐんぐん下っていき、チングルマのすばらしいお花畑を通り過ぎると、称名川の畔に到着する。ヤマガラシが清流の畔に咲き、すばらしい風景を作り出している。

 

 雷鳥沢のテント場を過ぎると、最後の登りとなる。暑くなってきて、長く下った後なので、この登りはこたえる。それでも、みんながんばって登り切り、みくりが池温泉に到着する。ここで、3日間の汗を流し、さっぱりして室堂に到着する。

 

 室堂からは、トロリーバス、ロープウェイ、ケーブルカーと乗り継いで、黒部ダムに到着する。ダムでは、放流が行われていて、迫力ある音と、すばらしい虹が見られた。ダムからさらにトロリーバスで扇沢まで行き、そこで路線バスに乗り換え、信濃大町駅まで行く。帰りの特急は、無事に座って新宿駅に向かうことができた。

 

 ある著名な心理学者の方が、子どもが思春期になるまでに、「あー、楽しかった」という想い出をできるだけたくさん貯金しておくことが大切だと言っていましたが、子どもたちの夏の想い出として、きっと「あー、楽しかった」が残ったことでしょう。

 

 子どもたちのことをしっかりと見守っていただいたスタッフを初めとして、参加者のみなさまに感謝いたします。

 

                                                                 記:網干