リーダー養成コース(槍ヶ岳)山行報告
実施日 山名 参加者 会員 障害者 0名 健常者 4名
平成24年9月15日~16日 槍ヶ岳(表銀座) 合計 4名 会員外 障害者 0名 健常者 0名

コースタイム:

9/15 中房温泉(6:35)…合戦小屋(10:05-10:35)…燕山(11:55-12:10)…大下りの頭
   (13:00-13:10)…切通岩(15:00)…大天荘(15:30)

9/16 大天荘(4:40)…大天井ヒュッテ(5:10-5:35)…ビックリ平(6:15-6:35)…ヒュッテ西岳
   (8:20-8:40)…水俣乗越(9:35-9:50)…ヒュッテ大槍(12:00-12:20)…槍ヶ岳山荘
   (13:20-13:30)…殺生ヒュッテ(13:50)

9/17 殺生ヒュッテ(4:00)…槍ヶ岳山荘(4:35-5:20)…殺生ヒュッテ(5:50-6:30)…槍沢ロッジ
   (8:55-9:15)…横尾(10:35-10:55)…小梨平(14:00)

天気:

9/15 晴れ後曇り一時雨

9/16 快晴後晴れ

9/17 霧後腫れ

★9月15日

 今回は、リーダー養成ということもあり、参加メンバーを見て、小屋泊まりの予定を変更してテント泊で行くことにした。

 

 天気予報は、山行日が近づくにつれ、微妙に変わってくる。2日目がハイライトのため、この日に晴れて欲しいという気持ちを胸に出発した。

 

 ムーンライト信州で穂高駅に着くと、空は晴れているようで、ホッとする。中房温泉で朝食を取り、出発する。何度も登った合戦尾根、今回も合戦小屋でスイカを販売していたので、一切れのスイカを4人で分割してスイカを食べる。日差しが強く暑かったが、合戦小屋に着く頃には、完全に雲の中に入っていた。

 

 燕山荘に着くと、野口五郎岳が雲の間から見えるが槍ヶ岳は見えなかった。とにかく稜線歩きは、雷を心配する必要がある。しかし、まだしばらくは大丈夫そうだ。

 

 燕山荘から表銀座の縦走路を歩く。気持ちの良い尾根が続く。槍ヶ岳が見えないのは残念だが、蛙岩を越え、大下りの頭に着く。今日の目的地、大天井岳は見えないが、これから歩く縦走路はある程度見えていた。

 

 大下りを下りきった頃から雨が降り始めたので、カッパを着る。だが、雨は長く続かず、すぐに止んでくれた。為右衛門吊岩は、どれが吊岩なのか、はっきり分からないまま通過し、気持ちの良い縦走路を歩いていくと、切通岩に到着した。鎖の付いた岩場を慎重に下ると、小林喜作さんのレリーフがあった。ここからが喜作新道なのだろう。

 

 連続するはしごを登り、大天井ヒュッテへの道と分かれ、大天荘へのトラバースルートに入る。じわりじわりと高度を上げていくと大天荘に到着した。疲れ切った体だが、みんなでテントを張り、名シェフのSさんが用意してくれた牛タンやウインナーを小型フライパンで焼き、最高においしい料理をいただいた。Kさんも卵を2個ずつ持ってきてくれて、他にも漬け物など重いものをたくさん振る舞ってくださった。

 

★9月16日

 3時半に起床して外を見ると満天の星空だ。天の川もよく見える。早々に朝食を取り、4時40分にヘッドランプを付けて出発する。

 

 大天井ヒュッテへのトラバース道は、ところどころ岩場があり、視覚障害者の人をサポートしていると、かなり厳しそうに感じる。トラバース中に日が昇り、北穂高岳や前穂高岳が朝日に色づいて見えた。大天井ヒュッテに着くと、剣岳や針木岳も見えるようになった。

 

 貧乏沢へ下る箇所を通り過ぎ、尾根に上がったところがビックリ平だった。野口五郎岳や水晶岳、鷲羽岳、立山、剣岳方面が開け、ビックリするほどうれしい場所だった。ここで、Sさんがコーヒーを振る舞ってくださった。最高の景色を見ながらのコーヒーは、最高だった。

 

 ビックリ平を過ぎ、喜作新道が南に大きく曲がるところに来ると、槍ヶ岳が北鎌尾根を従えてそびえ立つ姿がすばらしく、感動の声が上がる。ここからは、槍ヶ岳と北鎌尾根を常に見ながらの縦走になる。槍ヶ岳の展望を恣に歩ける尾根は、最高にすばらしく、さすがは表銀座だなと感心する。

 

 赤岩岳は山頂に登らず、トラバースして通過する。夏はトラバースできるが、冬は雪崩の危険があるため、忠実に尾根を歩かないといけないこともあり、冬の表銀座は中級コースといわれている。

 

 赤岩岳を過ぎるとヒュッテ西岳の向こうに穂高連峰がよく見えるようになる。テント場も、すばらしい展望の中にあり、とても良い場所だ。私は、20歳の頃、中房温泉から1日でここまで来たが、もうそんな体力は残っていないことを痛感する。

 

 西岳からの下りは、梯子や鎖場があり、慎重に下る。いくつかピークを越えたところに水俣乗越がある。槍沢へは登山道があるが、天上沢側にはないのだが、しっかりとした踏み後があった。

 

 ここからいよいよ東鎌尾根が始まる。いきなりの急登をがんばり、次々に出てくる梯子を登ったり下ったりしていく。槍ヶ岳は近づいたものの、ひときわ高く聳えている。

 

 ヒュッテ大槍が近づく頃、ヘリコプターが飛んできて、北鎌尾根の上空でホバリングを始めた。見ていると、人を引き上げて、飛び去って行った。北鎌尾根でそれを見ている人たちも見えた。この日、北鎌尾根では、一人が滑落してケガをし、2人が高山病の症状で動けなくなり、救助を要請したらしい。北鎌尾根もかなりの混雑だったようだ。

 

 それでもようやくヒュッテ大槍に到着する。水などを調達していたが、槍ヶ岳から来た女性が、「槍の穂先は3時間待ちだったので、あきらめて来ました」と教えてくれた。登山者が多いと思っていたが、槍ヶ岳がそんな状態になっていたのを初めて知った。

 

 岩場の連続の東鎌尾根を登り、ようやく槍の肩に到着する。登頂を目指す人の列は、小屋のすぐ近くまで伸びていた。槍ヶ岳山荘でテント泊の手続きをしようとしたら、すでにテント場はいっぱいで張る場所がないという。素泊まりで泊まるか、下の殺生ヒュッテのテント場に行かないといけないということなので、みんなに相談して下に下ることにする。槍ヶ岳山頂は、もう良いという意見があったが、Sさんが張り切っているので、明日の早朝に目指すことにする。

 

★9月17日

 3時過ぎに起きてみると、槍ヶ岳は見えるが、風が強く、時折ガスに巻かれるような天気だ。気持ちが萎えた人もいたが、Sさんは張り切っているので、4時にテントを後に、水とわずかの食料を持って出発する。

 

 槍ヶ岳山荘に着くと、完全に霧に包まれ、まだ暗いこともあって、何も見えない状態だった。ヘッドランプで登れないことはないが、もう少し様子を見ることにする。5時少し前に山頂を目指して出発するが、少し登ったところで、渋滞となり、私たちの前の人が風が来ないところにはあと2人しかいることができないから、しばらく待ってから登ってきた方が良いという。山頂に登った人たちは、御来光が見られるまで下りてこないので、それを待っていたのでは、帰りが遅くなってしまう。みんな納得し、あきらめて下山することにする。

 

 テントを撤収し、槍沢の登山道を下っていくと、雲の下に出た。展望も広がり、さらに下ると、雲の下に槍沢のモレーンなどがよく見える。アザミの仲間やミヤマシシウドがたくさん咲く付近を過ぎると、大曲に到着する。さらに行くと、ババ平のテント場となる。槍沢ロッジで休憩し、一ノ俣、横尾と通過して、徳沢園で昼食タイムとする。

 

 予定より少し早く上高地に到着し、小梨平のキャンプ場にある風呂に入って汗を流した。

 

 体のあちこちが痛く、ボロボロになるくらい疲れたが、2日目に槍ヶ岳の展望を恣に尾根歩きを楽しめたことに満足し、上高地から帰るジャンボタクシーに4人で乗って、深い眠りに落ちたまま松本に向かった。

                                                                 記:網干

 

《参加者の感想》

 槍ヶ岳へいく、今回は表銀座からはじまる。わたしはそういう長い縦走が好きだが今回はちょっと勝手が違っていたような気がしました。
 中房温泉口から合戦尾根、燕山荘まではなんてことなかったのだが、そこからが長かった。
 稜線歩きでもアップダウンの格が違い、息も切れ切れ、亀のような歩みでなんとか大天井についたときはやっとの思いでした。
 稜線上にあるテント場の外にいると寒かったけど、4人で入るテントはあたたかく、山シェフ佐藤さんの作る料理に感激しながら山談義に花がさいた。
 そこで明日の行程を聞いて、時間が長いのが気になったが、明日には明日の風がふくだろう、いまさら戻ることもできないし、リーダーについていけばいいんだ、その安心感だけがたより。

 

  翌朝3時30分、空は星が間近に見えて綺麗。天の川もうっすらわかりました。これこそ2000m級にいる醍醐味です。
 大天井から槍ヶ岳へ東鎌尾根をいく道は、それはそれは厳しく、軽みでいく若者がうらやましかった。この荷物がなかったら、もっと早く歩けるんだろう。そんなことを思いながらも亀のごとく前へすすむ。
 晴天が背中を押してくれて、稜線上からは富士山から八ヶ岳、南アルプス、後立山連峰、穂高連峰、その下には雲海。晴天に感謝しながら歩く。槍ヶ岳がどんどん近くなる。
 こんなところにきて、歩いている自分が信じられないくらいの景色。今もその情景は脳裏に焼き付いたまま。
 途中途中現れるはしごはものすごく、ほとんど垂直で長い。こわいとは思ったが、とにかく三点支持だけは守って一歩一歩すすむ。
 人の手先、足のありがたみを感じながら。とにかく長い縦走路を歩いて、今日もやっとこさ槍ヶ岳山荘について一安心。
 しかし3時間待ちの渋滞、あげくにテント場もない。ガーン、がっかり。そんなこともあるんだ~初めての経験。
 こんなときもリーダーの判断は早い。すばやくはるか下に見えるテント場へ。そこでも佐藤シェフの料理がでてきて、感謝感激。こういう人とお仲間になれてよかった~そう思いながらどんどんいただく。

 3日目は強風の槍ヶ岳を背にひたすら下る。疲れた足に重力がかかり、上高地についたときは自分の足が自分の足でないような感覚だった。

 

 それにしてもよく歩いたな~と自分で自分をほめたいくらい。
 槍ヶ岳、それは間近でみると天につらぬく剣の穂先のよう。威厳をもって堂々と立っていて、かっこいい。
 山頂にいけなかったことは確かに残念だが、わたしはそこにたどりつくまでのプロセスが好きなので大満足です。
 あんな晴天にめぐまれ、なによりもちゃんと無事に無傷で帰ってこれたこと、それが一番よかった。
 そして今回一緒に苦しみ、感動しあえた仲間に心から感謝してます。
 あんな岩稜帯ですから、ひとりでも怪我をしたらそこで終了。
 最後の最後まで一緒にあるけたことはリーダーはじめ仲間がいたからこそ。
 よく笑った3日間。これも過ぎ去れば思い出になってしまうんだろうけど
 そこで得た信頼感はずっとずっとつながっていくんだと思います。
 今回の経験はまた自分を賢くしてくれたように思います。
 辛くて苦しんだ分、わたしはまたさらに強くなっている、そう信じてます。
 槍ヶ岳、同じ場所で変わりなく、そこにいるだろうから、またいつかきっと。
 重い重いザックを担ぎながらもつらい顔ひとつださないで笑顔でリードしてくれたリーダー。
 たくさんの食材を運んで、山では食べられないような料理でもてなくしてくれたSシェフ。
 うしろから、前から、大丈夫、頑張れ、いける、と3日間ずっと心の支えになってくれたYさん。
 みなさん、ありがとうございました。
 そして怒涛の3日間、お疲れ様でした。

 

                                                             記:S.Kさん

 

 自分の体力のすべてを使い果たしたような山行でしたが、槍ヶ岳がだんだん近づいてくるすばらしい表銀座の尾根歩きといつ行っても美しい景観を楽しませてくれる上高地の林道歩きを堪能させていただきました。

 今回、地図を見ながら視覚障害者の方と一緒にいくにはどういうルートや日程がよいのかいろいろな山でシミュレーションし議論してみました。
 どこでも時間と人出をかければ行けないことはないけれどもやはりより多くの人が参加しやすい、そして長くても2泊程度の工程を考えると以下のようないろいろなポイントを考慮する必要があることなどを皆で確認し意見交換しました。

 

・沢沿いのルートは危険度が高いので避けた方がよい
・危険マークがあるルートは避けた方がよい
・雪のある方が歩きやすいルートもある
・岩場はどうしてもネックになるのでサポートに時間がかかる 等々・・・

 

 毎年、たくさんの山行をAさんに計画していただいていますが本当にいろいろなことを考えての計画であることを実感いたしました。
 現在、来年の計画を作成する時期ですので是非会員の皆様の山行案や様々なアイデアをたくさんお寄せ頂ければと思います。

 

                                                             記:M.Yさん