鳥海山山行報告
実施日 山名 参加者 会員 障害者 4名 健常者 7名
平成24年10月6日~7日 鳥海山 合計 15名 会員外 障害者 0名 健常者 4名
コースタイム:
10/7 祓川駐車場(5:30)…七ツ釜避難小屋(7:15-7:25)…氷の薬師(8:55-9:00)…
   七高山(10:15-10:50)…新山(11:55-12:05)…大物忌神社(12:35-12:45)…
   七五三掛(14:25-14:35)…御浜小屋(15:35-15:45)…鉾立(17:20)
天気:曇り後霧、一時晴れ後霧

★10月6日

 夜行バスで酒田に到着する。コンビニで食料を買い込み、羽越本線で吹浦に行く。車窓から、山頂を雲に隠した鳥海山が見える。どんよりと曇って、天気はあまりよくない。

 

 吹浦で、温泉に入ろうと、あぽん西浜まで歩いて行く。「あぽん」は、母親が幼子と一緒に風呂に入ることを意味するらしい。家族や隣人への温かい人間愛がこめられ、温泉で裸の付き合いを通じて、人間関係がさらに深まるようにと付けられた言葉らしい。

 

 温泉に入ったあとは、また吹浦駅に歩いて戻る。近道をしようと、線路を歩いて駅のホームへ。吹浦駅は無人駅なので、許してもらおう。

 

 象潟で、由利高原鉄道に乗り換える。ホームに着くと、宇宙戦艦やまとの絵が書かれた列車と、秋田おばこのお姉さんが待っていて歓迎してくれる。2両目の車両は、テーブル付きの車両だったが、私たちだけしか乗らない貸切状態の車両だった。窓側には、子どもたちの絵が展示され、駅にはいろんなかかしが展示されていた。7日の「おばこ特産品まつり」のイベントにあわせた企画らしい。

 

 矢島駅に到着すると、鳥海荘の方がバスで迎えに来てくださっていた。バスに乗り込むと、今度は、駅の方が見送ってくださる。人情味のあるみなさまでした。

 

 鳥海荘に到着すると、玄関から明日登る鳥海山がよく見えている。明日は、今日よりも良い天気であることをただ願うばかりだ。チェックインできる時間までまだあるので、ロビーでくつろいだり、近くを散策したりして、思い思いに時を過ごす。

 

 おいしい夕飯をいただき休んでいると、石巻から来たGさん親子が、20時に到着した。思ったよりもかなり早くて、これならある程度、ゆっくり休んでもらえそうで一安心だった。

 

★10月7日

 鳥海荘の登山パックは、4時に朝食をいただけるのでありがたい。今回は、鳥海荘のひろ社長が同行してくださると言うことだったが、親戚に不幸があり、山の同行はできなくなった。しかし、祓川までバスの運転をしてくださるというので、とてもありがたい。コースの注意点などもお聞きし、たいへん参考になった。

 

 駐車場の出発は5時30分。もうヘッドランプもいらない時間となり、鳥海山の山頂もよく見えていた。

 

 登山口から少し行くと祓川ヒュッテがある。さらに行くと、竜ヶ原湿原に出会う。鳥海山では、これから何度も湿原に出会うことになる。

 

 あまりきれいとはいえないが、それでも紅葉した登山道を歩くのは気持ちよい。賽の河原で休憩し、さらに登ってふり返ると、紅葉した山腹の向こうに祓川ヒュッテが見えていた。

 

 小さな尾根の上に出ると、そこは七ツ釜避難小屋の上部だった。七ツ釜方面の紅葉は、今回一番きれいだった。どんよりした曇り空だったが、それでも遠くに山が見えていた。もしかしたら栗駒山かも知れないと思うが、周囲の山が見えなかったので、何とも言えない。

 

 さらに登ってふり返ると、象潟方面の日本海の海岸線が見えてきた。しかし、山頂方面は雲に隠れてしまった。康新道への分岐を過ぎ、さらに登ると、大きな岩がゴロゴロする沢状のところに入っていく。ゴーロ帯の右側を歩き、さらにゴーロ帯を横切って右岸側へといく。ここから氷の薬師までが、矢島口コースで最も厳しいところだった。この厳しいところを初参加のCさんにFさんをサポートしていただいたが、しっかりとサポートされていて、ほとんど不安を感じることがなかった。

 

 氷の薬師からは、石畳となった歩きやすい道となる。ただ、Rちゃんが「疲れた」と言い始めた。早朝からもう4時間以上歩いているので、疲れるのも無理はない。ゆっくりペースで登っていこう。

 

 舎利坂にかかる頃から、空が明るくなり、薄日が差す時も出てきた。霧が晴れることを期待したが、なかなか晴れてくれず、七高山でも残念ながら晴れなかった。七高山には、東日本大震災の被災地の復興などを願って、今年、ひろ社長はじめ多くの方が引き上げて設置してくださった石碑がしっかりと立っていた。

 

 七高山で昼食を取り、外輪山から急な岩場を下って、大物忌神社に向かう。風がかなり強く、寒さに震えながら下ることになった。

 

 神社の手前に来た時、霧が晴れて七高山がしっかりと見えるようになった。新山も見えてきた。新山は時間的に無理かなと思っていたが、青空が見えるようになったので、これでは行かないわけにはいかない。神社の手前にサポートする人以外は、ザックを置き、希望者で新山を目指す。

 

 巨岩が積み重なってできた新山は、視覚障害者の人にとって最も歩きにくいところだ。しかし、みんなしっかりとサポートして登ることができた。下りも慎重に下ったが、登りよりもスムーズに下れたようだ。

 

 大物忌神社から七五三掛を目指して下る。ふり返ると、新山や外輪山が、青空をバックにくっきりと見えている。すっかり良い天気になった。時間がかなり遅れているので心配だったが、七五三掛へのトラバースも無事に通過し、七五三掛に出ると、光り輝く日本海が見えた。また、北側の霧には、ブロッケンがよく見えた。なかなか見られることが少ないのに、Gさんは3回目の登山で見ることができ、とても幸運だったのではないだろうか。ただ、Rちゃんは、疲れてそれどころではなかったようだ。

 

 御田ヶ原分岐を過ぎ、扇子森に登る。ここを過ぎると、鳥海湖が見える。手前の草紅葉と、青空を写した青い湖面がすばらしかった。御浜小屋で、トイレを借り、時間も遅いので、下山を急ぐ。

 

 先程の青空はすっかり消えて、深い霧にまかれ風も強く、とても寒くなってきた。疲れ切っていたRちゃんには、お母さんとYさんが一緒に歩いてくれている。他のスポーツなら、疲れたところで止められるが、山は山頂を過ぎたら、仮にエスケープルートがあったとしても自分の足で最後まで歩かないと帰り着けないところが、他のスポーツにない厳しいところだ。疲れてフラフラになりながらも、最後まで、歩き通したRちゃんは、本当にすばらしい。Fさんをはじめ、みんなが祝福の気持ちを持っていた。

 

 私も七五三掛付近から右膝が痛くなり、軽い関節炎を起こしているなと感じ、かばいながら歩いているうちに左膝も痛くなり始めたが、その頃には鉾立に着いていた。メンバーに不安を与えるようではリーダーは失格なので、どんなときでも笑顔でいるのはリーダーとして当然のこと。しかし、体のあちこちが痛くなるようになり、年齢による衰えを実感するようになってきた。

 

 鉾立に着く時間がほぼ見えてきたところで、タクシー会社に電話を入れ、迎えに来てもらう。日が沈み、わずかに残照のある西の空が見える。そんな鉾立に着くと、Rちゃんのお父さんが土産を持って駆けつけてきてくれた。

 

 12時間近くの行動時間をみんながんばって歩き通しました。みなさんのご協力にただただ感謝です。Gさん親子と別れ、タクシーに乗り込んで、夜の帳が下りた鳥海ブルーラインを通って、吹浦に向かった。みんな力を出し切った充実感を胸に。

                                                                 記:網干

 

《参加者の感想》

 鳥海山、その山は憧れの山のひとつでした。その山にいけるチャンス到来。

 

 日本海沿いにドーンと立ちはだかる長い峰々。電車の中から見ながらあのてっぺんにいけるんだろうか。どの山へいっても不安はつきものであるがその不安を和らげてくれるのが一緒に歩く仲間たちの存在。みんな個人差はあっても同じように疲れているのに笑って和ませてくれる。リーダーは今日も終始にこやか。リーダーのあの笑い顔がわたしのアミノバイタル。たぶん前を向いたときは顔は変わってるのかもしれない。

 

 鳥海山は変化に富んでいて、癒しあり、スリルあり、今日も他愛ない話で笑いが絶えない。七高山(旧鳥海山)到着。ここが山頂かと思ったら、それが違って今日の核心部、新山へ。これがすごかった。岩と岩をつないで手と足を駆使して山頂到着。やったね、と深澤由美子さんと握手。登ったら下りなきゃならない。深澤さんがいったことば、登れた山は下りられんだって。当たり前の言葉かもしれないけどその言葉が頭に残って離れない。登り終えて新山を見上げたらそれはそれはすごい岩の塊だった。

 

 鳥海山は遠くからみるとなだらかに見えるが近くにいってみると荒々しい。下山中、ブロッケンと遭遇。それも二重のブロッケン。観音様になった気分(合掌)。日本海側にまわれば雲の合間から日本海があらわれてくれた。わたしはこれが見たかった。だから大感激。青く澄んだブルーの鳥海湖も綺麗でその水に触ってみたかったくらい。そんな体力は全然なかったが・・・

 

 下山は長く感じたがやはりみんなが力をくれる。あ~限界と思ったところでゴール。いつも同じことを感じる。体はうまくできてる。体はちゃんとコントロールしてくれてる。無事に終えるまで見守ってくださったリーダーさん、お疲れ様でした。そして参加者のみなさん、この日一日のひとこま、ひとこまの一瞬一時一緒に過ごさせたいただいたことに感謝します。ありがとうございました。

 

                                                             記:S.Kさん