個人山行(槍ヶ岳)報告
実施日 山名 参加者 会員 障害者 1名 健常者 7名
平成25年5月3日~5日 槍ヶ岳 合計 8名 会員外 障害者 0名 健常者 0名
コースタイム:
5/3 上高地(6:40)・・・横尾(9:40-10:30)・・・一ノ俣(11:55-12:30)・・・槍沢ロッジ(13:30)
5/4 槍沢ロッジ(4:25)・・・ババ平(5:00-5:15)・・・大曲(5:50-6:00)・・・槍ヶ岳山荘(9:50-11:00)・・・
   槍ヶ岳途中まで往復・・・槍ヶ岳山荘(12:55)
5/5 槍ヶ岳山荘(4:25)・・・槍ヶ岳途中まで・・・槍ヶ岳山荘(5:30-6:35)・・・槍沢ロッジ(8:50-9:10)
   ・・・一ノ俣(9:50-9:55)・・・横尾(10:55-11:15)・・・小梨平(13:40)
天気:
5/3 晴れ、
5/4 晴れのち曇りのち雪、
5/5 快晴

★5月3日

 夜行バスが上高地に到着する。穂高連峰がくっきりと見えて、すばらしい天気だ。

 河童橋で山に登る前の写真を撮って、出発する。ひんやりと冷えた上高地の空気はすがすがしい。ゴジュウカラやコガラの歌声がこだまする。ただ、まだ寒すぎるのか、オオルリやコマドリなど夏鳥の歌声が聞こえないのが気がかりだ。

 

 横尾に続く林道は、何十回も歩いた見慣れた風景だが、やはり気持ちが高ぶる。前穂や北尾根、屏風岩など、思い出の岩壁につい目が行く。

 横尾からは、完全に雪道になる。凍って滑りやすい桟道を気をつけて通過する。横を流れる梓川の流れは、エメラルドグリーンで美しい。槍見河原に着くと、明日登る予定の槍ヶ岳の穂先が見える。さらに、一ノ俣、二ノ俣と過ぎ、槍沢ロッジに到着。部屋は私たち8人が貸しきりだった。

 

★5月4日

 夜半、外に出てみると、雲が少しあるが星空が望めた。出発は、4時を予定していたが、少し遅れて4時25分に出発する。5月の日の出は早い。ヘッドライトはすぐに不要になる。

 

 樹林帯を登り、大きな岩の赤沢岩小屋を過ぎ、ババ平のキャンプ地に到着する。多くのテントが張られていた。ここからは、槍沢の雪渓登りが延々と続くことになる。

 

 まずは、大曲を目指して歩く。振り返ると、蝶槍の上にあかね雲が綿菓子のように浮かんでいる。大曲からしばらく歩いたところで、かなり遅れたYさんが心配になる。相談し、Yさん夫妻とKさんは、後からゆっくり登ってくることにする。

 

 グリーンバンドと呼ばれる最初のモレーンのきつい登りをがんばると、槍ヶ岳が正面に大きく見えるようになる。傾斜は落ちたが、ゆっくり休めるところがないので、そのまま登ることにする。それでも一度は休まなければと思い、ピッケルのブレードを使って雪渓にバケツを掘り、ザックが滑り落ちないようにする。

 

 そして、最後の槍の肩に登る急登にかかる。そのとき、大声が響いた。滑っていたスキーヤーのスキーが外れて、雪渓を滑り落ちたのだ。勢いが付くので、スキーが人にぶつかったら大けがをする。大声で知らせてくれた人に感謝です。スキーは、すごい勢いで滑り落ちていった。その後、もう一人のスキーヤーが転倒し、数メートル滑落した。しかし、ストックが流されただけで大事には至らなかったようだ。

 

 最後の急登をがんばって、槍の肩にある槍ヶ岳山荘に到着する。手続きを済ませ、休憩した後、槍ヶ岳の登る準備を始める。玄関に行くと、Yさん夫妻とKさんが到着していた。私が二往復しようと思っていたが、合流したのなら、一緒に行こうと、急がせる。「もたもたするんじゃない~」という私は、鬼軍曹と呼ばれることになった。鬼軍曹と言えば、中央アルプス千畳敷の救助隊長が有名だった。同じ名前で呼ばれて光栄だった。

 

 とにかく急いで準備をしてもらい、アンザイレンして槍ヶ岳山頂を目指す。しかし、すでに周囲は霧に包まれ視界がない。風もかなり強い。トレースのついた雪の斜面を登り、小さな岩場を超えてさらにトラバース気味に雪の斜面を登る。このとき、途中で雪の突起にザイルをかけて進めば、それがランニングビレーと同じ役割を果たすので、わずかだが安全性が高まる。

 

 小尾根を超えて北面に入る。ここもトラバース気味に進み、雪と岩のミックスを登ると、最初のはしごとなる。ここで、下りてくる人を待つが、いつまでたっても途切れない。風は強く、雪も降り出した。私たちの後に登ってくる人たちもいない。残念だが、ここで引き返すことにする。下りは登りより難しいので、慎重に下ってもらう。

 

 槍ヶ岳山荘は、8人で二部屋使わせてもらえた。ゆっくり休んで、英気を養うことができた。

 

★5月5日

 夜半に外に出てみると、少し雲があるが満天の星空に近い。朝食が5時30分。日の出が4時50分くらい。人数を制限し、3時半に起きて4時に出発すれば日の出を見て、朝食に間に合いそうだ。3時半に起きてみんなを起こそうと思ったが、寝過ごしてしまい、がたがた出発準備を始めるパーティーの音で起きたのが3時50分。しまったと思ったが、いけるところまででもと思い、登ってみたい人を起こす。

 

 大急ぎで出発準備をして、4時25分に出発する。ヘッドライトはすぐに不要になったが、岩と雪のミックスはなかなか厳しい。人数が多いこともあり、最初のはしごを超えて、次のはしごにかかり、その上の鉄杭の打たれた岩場まで来たところで、時間切れで断念する。山頂も見え、もう少しだが、上高地発のバスに遅れることはできないため、あきらめて下山する。

 

 少し下ったところで、目に入ってきたのは、モルゲンロートに染まった穂高連峰だった。ピンクに染まるその美しさは、たとえようがない。ただただ心にしみいるばかり。「また来るのを待っているぞ」と穂高が語ってくれたように感じた。

 

 小槍の向こうには、薬師岳や立山が見える。槍の肩からは、笠ヶ岳や黒部五郎岳、双六岳、三俣蓮華岳、樅沢岳、鷲羽岳、水晶岳などが見える。純白のその姿もたとえようもなく美しい。そんな風景に後ろ髪引かれる思いで、小屋で朝食を取り、下山にかかる。

 

 下山はどんどん飛ばすが、ペースにかなり幅があるので、Y夫妻が気を遣って、早いメンバーで先に下ってくださいと言ってくれる。もしものことを考えて、バスのチケットを渡し、他のメンバーは先に下らせてもらう。

 

 ジグザグでないだけに、下りは夏道より遙かに早い。夏のコースタイム3時間半のところを2時間15分で槍沢ロッジに到着。その後も、ぐんぐん飛ばして、小梨平に13時40分頃到着。お風呂に入ってゆっくり汗を流し、上高地に向かう。程なくYさんから電話があり、すでにバス停に着いているとのこと。

 

 みんな、それぞれに精一杯がんばった槍ヶ岳。なかなか簡単には登らせてくれませんでした。

 たかが土の瘤、されど土の瘤。槍よ、また来るからな。

                                                                 記:網干

 

《参加者の感想》

 群青色に近い濃いブルーの空にそびえる槍ヶ岳は圧巻でした。

 穂先には時間切れで立つことができませんでしたが、次回は「あの人達すごいね!」と言われるくらいレベルアップし、みんなで山頂に立ちたいと思います。

 今回の山行では以下のスキルが必要であると感じました。

 

1)計画した日程内に歩ききることができる体力

2)服装や装備の状況に応じた適用(-10度から体感20度位までの気温変化に対応できる装備)
・低体温症と凍傷の予防(ファイスマスク、フード、ネックウォーマー等の適宜着脱)
・装備の着脱時は要注意が必要(予備の手袋は必携)
・強風時はゴーグル着用がお勧め(防寒、視界確保)

3)次の行動への準備(予定変更の確認やペース配分)
・人任せにしない
・平常心を保つ
・ベストを尽くす

4)アイゼンとピッケルワーク(特に岩場)やロープワークの技術
・岩場でアイゼンを付けての練習は必須
・アンザイレン時の前後ロープコントロール
・岩を利用したセルフビレイ(各メンバーの間で岩に巻きつけながらすすめばリスク低減となる)

 

 今回も貴重な体験をさせていただきました。いろいろな場面で魂に響くお言葉を頂くことができ、とても嬉しかったです。皆さま、本当にありがとうございました。山は本当にいろいろなことを教えてくれますね。山と仲間に感謝です。

 

                                                              記:M.Yさん

 以前から念願していた残雪残る槍ヶ岳にいってきました。
 朝5時30分に上高地についたときは、またきてしまった~、この場所。感慨ひとしお。ここからが登山のはじまり。初めてここにきたときと同じ緊張感。

 上高地、明神、徳沢、横尾。慣れ親しんだ道。GW連休、たくさんの人が大きなザックでゆきすぎる。横尾で穂高へ行く道・槍ヶ岳へ行く道と分岐する。栄光の架け橋(横尾大橋)を左手にみて右手に進む。梓川は水が澄んでいて吸い込まれるようなエメラルドブルー。空気は冷たいが、せっせと歩いている私たちにはちょうどいい。樹林帯で小さな小さな槍の穂先がみえた。真っ白の槍、感激~

 

 2日目、一番エネルギーを使う一日が始まる。1200mの標高差を直登する。きつい、足のあゆみも亀になる。槍を目指して無我夢中で上へ上へ目指すが、最後の急登は30歩歩いて、ひと呼吸のあゆみだった。槍の肩についたときは槍ヶ岳は真っ白だった。すぐに槍へ出発。準備がもたついて、みんなを寒い中待たしてしまった。槍への山頂へはいけなかったが、Sさんのここが山頂よといった言葉がうれしかった。

 

 3日目早朝再チャレンジ。時間切れ。最後のはしごが見え、山頂で写真を撮る人も見えていた。昨日よりちょっと高い、またしてもここがわたしたちの山頂。

 黎明の朝をむかえて、その美しさは艸玄そのもの。雪のアルプスは厳しいがその魅力はそれ以上のものがある。帰りは滑るように?転がるように、下る下る。こんな坂道をよく登ったもんだと自分に感心してしまう。横尾でのんびりかと思いきや、すぐに出るという。休みはほとんどない。とにかくわたしの短い足をフル回転させて歩く。横尾、徳澤、明神、お風呂のあるキャンプ場まで2時間30分。いままで歩いた中で最速の速さ。やればできるもんだとまたまた感心。人の力は無限で、できないと思ったらできない、できると思ったらできる。そんなこと当たり前のことを再確認させてもらった。

 なぜあんなに上高地に急いだのか、それはあとからくるY夫妻と連絡をとるためだとあとで気がついた。携帯は上高地に近くならないと繋がらない。Yさんは横尾か徳澤で公衆電話で連絡がとれる。それでいまどこにいるかがだいたい読める。すごいリーダーだなと思いました。そんなことだれにも相談もせず一言も言わず、ひとり頭の中で計算していたのでしょう。そのことにやっと気がついたとき、わたしは感涙してしまった。どこまでも人を中心に考えているリーダー。槍ヶ岳山頂もリーダーとSさんだけならザイルなしでいけただろう。それでも未経験なわたしたちを置いていかないで連れて行こうとする。そんなリーダーに、わたしはどんなことばで感謝の言葉をいったらいいんだろう。

 山仲間アルプに出会えたこと、どんなことにも屈することがないリーダーに出会えたこと。心より感謝いたします。心温かい仲間に乾杯。ありがとうございました。

                                                              記:S.Kさん

 

 2年ぶりの上高地は、以前より寒く、お腹をこわしてしまいましたがSさんから、薬とカイロをいただき、天候も良く、槍沢ロッジまで快適でした。

 5月4日の本番は、大曲からのきつい上りもなんのその、肩にくい込むザイルの重さだってすばらしい景色を感じては、へっちゃらで、ぐんぐん登って、途中、トレースのわかりにくい所も乗り越えて、槍ヶ岳山荘に到着して、部屋の窓から見た、槍の穂先が見事で、写真を撮ろうとカメラを構えた瞬間から、みるみる雲に、槍の穂先が消えて行きました。荷物を、デポして、槍へのアタックは、大渋滞と、吹雪で、今回は山頂は、諦めましたが、良い経験と、楽しい山行で、また槍ヶ岳に会いに行きたいと思うすばらしい山旅でした。

                                                              記:M.Kさん