登山知識及び技術向上コース(剱岳)山行報告
実施日 山名 参加者 会員 障害者 1名 健常者 8名
平成25年9月21日~23日 剱岳 合計 9名 会員外 障害者 0名 健常者 0名
コースタイム:
9/21 馬場島(7:40)…1,200m(9:20)…1,550m(10:20-10:40)…1,920m三角点(11:40-12:00)…
   早月小屋(13:50)
9/22 早月小屋(5:30)…剱岳山頂(9:25-10:00)…2,840mケルン(11:30-12:00)…前剣(12:30-12:40)
   …一服剣(13:35-13:45)…剣御前小屋(15:55)
9/23 剣御前小屋(7:15)…みくりが池温泉(9:35)
天気:
9/21 快晴、
9/22 曇り、
9/23 晴れ

★9月21日

 夜行バスで富山に着き、富山地方鉄道で上市へ。そこからタクシーで馬場島に入る。冬も合わせると6回目の馬場島だろうか? 様子はかなり変わったが、登山指導センターは変わっていなかった。

 

 登山口の石碑を見ながら、いきなりの急登にかかる。ぐんぐん高度を稼ぐ。傾斜が落ちベンチのある所で小休止。小窓尾根のマッチ箱などが見えてくる。知らないうちに松尾平を過ぎ、また急登が始まる。1,200mの標識があり、私の高度計とほぼ同じだ。

 

 その後、1,400mで狂いはじめ、1,600mも違っていた。私の高度計だけではなく、地図とも違っている。早月小屋でメンバーのSさんが確認したら、実際の標高に合わせているのではなく、展望の良い場所など休憩ポイントに標識を設置しているそうだ。聞けば分かるが、設置する予定の場所の標高を事前に表示しておいた方が良かったのにと思わずにはいられなかった。

 

 左手に猫又山が見え、その右手には、赤谷尾根から赤谷山、白萩山、白ハゲなどが見えてくる。「剣の歌」で歌われている「剣見るなら赤谷尾根でよ~」の赤谷尾根にいつか行ってみたいと思っていたのだが・・・。

 

 小窓尾根は、ニードル、ドーム、マッチ箱、小窓の頭など岩峰がせり上がっている。30年ほど前に、春の小窓尾根を登ったことが思い出される。あのときは、下りに使った早月尾根がとてもやさしい尾根に感じ、目をつぶっていても歩けると思ったものだが、30年も年を重ねるとさすがにそうもいかない。数日前に痛めた膝をかばいながら登っていく。

 

 右手に大日岳や奥大日岳が見えるようになり、富山平野や富山湾も見えるようになってきた。ユキサザやベニバナイチゴ、コバイケイソウの実などを楽しみながら登り、途中の池では、サンショウウオの子どもがたくさんいた。ルリボシヤンマと思われるヤンマも飛んでいた。

 

 途中で剱岳山頂や早月小屋が見えたが、まだまだ遠い。それでも歩を重ねて展望の良い丸山に到着。すぐ下に早月小屋がある。一夜の宿をお世話になろう。満員とのことだったが、我々は個室を使わせてもらい、布団一枚に二人程度で休むことができた。

 

★9月22日

 今日は、今回の登山の核心の日だ。早月尾根のしし頭、別山尾根のカニの横ばいなど、岩の難所があるコース、気をつけていこう。

 

 早月小屋で朝を迎えたが、素晴らしい朝焼けが広がっていた。小屋の人も、ひさしぶりにきれいな朝焼けを見たと言っていた。小窓尾根はシルエットとなっている。

 

 小屋の方にお礼を言い、山頂目指して出発する。早すぎると言われるが、私は寒くて、カッパを羽織り、さらに羽毛服まで着込んでしまった。

 

 次第に岩場が現れ、ロープや鎖を張ったところが次々に出てくるようになった。2,450mの小ピークに着くと、剣尾根が目の前に現れるようになる。小窓尾根のマッチ箱は、すでに同じくらいの高さになってきた。剣尾根は、剱岳で最も思い出深い岩尾根なので、「あそこが門だな」などと目をこらして見つめた。ドームの上で3人でテントに泊まった思い出も忘れることはない。剣よ、ありがとうと思わずにいられない。

 

 さらに2,600mを過ぎ、急な岩の道をぐいぐい登っていくと、いよいよ早月尾根の核心部、しし頭に到着した。ここは、片側がすっぱり切れた岩場を鎖を頼りにトラバースしていく。ちょっと心配もしたが、全員無事に通過した。

 

 しし頭を過ぎても、岩場の急登が続く。鎖もずっと付けられている。室堂が見えるようになると、別山尾根との合流点は近い。別山尾根で大渋滞が起きている様子まで見える。

 

 別山尾根と合流し、山頂に到着した。振り返ると、遠くに槍ヶ岳も見えている。薬師岳や笠ヶ岳、立山三山、針ノ木岳、蓮華岳、鹿島槍から白馬岳の後立山連山もよく見える。手前には源次郎尾根と八ツ峰もよく見えていた。

 

 山頂での写真も順番待ちだが、SGさんが並んでくださっていた。私が写真を撮って戻ると、すぐに集合写真を撮ることができた。SGさん、みなさん、ありがとうございました。

 

 山頂でゆっくりした後は、いよいよ別山尾根の下りとなる。岩の道を下っていくと、順番待ちとなっている。これはカニの横ばいの順番待ちだ。30分ほど待って順番が来たが、登りで使うコースのカニの縦ばいは2時間近く待ったようだ。下る順番も決めていたので、順調に下ることができた。ハーネスにシュリンゲとカラビナをかけ、鎖にカラビナをかけて下ることにしたので、安心して下れる。私は、ビデオを撮ったり、写真を撮ったりして下っていく。

 

 カニの横ばいの後は、長い梯子があった。さらに下ると避難小屋跡があり、その後も、平蔵のコルを過ぎ、平蔵の頭への気持ちよい登りとなる。ケルンのあったところで長い休憩を取り、さらに下って、前剣への登り返しとなる。ここも急な登りだった。登った後は、山腹のトラバース。片側が切れ落ちてスリルのある所だ。

 

 前剣で休憩し、一服剣を目指してぐんぐん下っていく。落ちる危険のない岩場の下りは、手を使わずに下るとバランス感覚を養う練習になるのだが、女性陣はすぐに止めてしまったようだ。

 

 一服剣からクロユリのコルへ行き、剣山荘によらずに剣御前小屋を目指して山腹をトラバースしていく。しっかり色づいたナナカマドや紅葉したチングルマが美しい。剣御前の小屋について、みんなホッとしている。早月小屋から10時間半ほど行動したのだから疲れて当たり前。お疲れ様でした。

 

★9月23日

 朝起きると、雲に包まれて剱岳が見えなかった。これでは、剣御前に行っても剱岳が見えないので、まっすぐ帰ろうと思ったが、次第に雲が消えていき、完全に晴れ上がった。朝日を浴びた剱岳が剣沢小屋からしっかりと見えている。これでは、このまま帰るのはもったいない。朝食後、剣御前手前のピークを目指して登り始める。振り返るとすぐに槍穂高連峰が見えてきた。

 

 私は、やはり剣御前まで行かないと剱岳を正面に見られないので、ひとっ走り剣御前まで行くことにする。

 

 やはり来て良かった。正面にどっしりと正座したような剱岳が見えている。富山方面には雲海が広がり、ブロッケンも見えていた。後ろ立山の山々や剱沢もよく見える。朝日にチングルマの綿毛が輝いている。素晴らしい展望を楽しんで、みんなが待つ小ピークへ急いで戻った。

 

 剣御前小屋から雷鳥坂を快適に下る。下には素晴らしく紅葉したところが見える。室堂全体としては2分程度の紅葉だと思うが、所々しっかり紅葉していて楽しませてもらった。

 

 雷鳥沢のテント場を過ぎ、最後の階段を上って、硫黄臭の激しいところを通り過ぎるとみくりが池温泉に到着する。3日間の汗を流してさっぱりする。室堂からトロリーバスやロープウェイ、ケーブルなどを乗り継いで扇沢へ。タクシーで信濃大町駅に着き、食事を取ったが、少しせわしなくすぐに駅に戻って、ホームであずさを待った。1日に1本しか信濃大町駅に止まらない特急に乗り込んで、帰途についた。

                                                                 記:網干

 

《参加者の感想》

今年のわたしの目標であった剣岳に行く日がきた。荷物は軽くといわれていたので、体重計にのせながら軽量化を図ったが、10キロをきれなかったのが残念でした。この日のためにわたしは毎週のように山に通った。雨の日は体育館をぐるぐる走っていた。それくらい思いは熱く、岩と雪の殿堂に向かった。

 登山口に「試練と憧れ」という石碑があった。ますます興奮してくる。急登で有名な早月尾根だが、道も整備されており、トレランの人が走って追い越してゆく。軽装備なので日帰りなのだろう。

 

 早月小屋につく間に池塘があり、そこにはサンショウウオがたくさんいた。ギンヤンマもたまごを植え付けに来ている。そこに大人が群がっている。「なんか平和ですね」といったらNさんがとてもうけてたようで笑い転げてました。変化のある早月尾根、小屋が見えてからが遠いのはどこも同じ。

 

 高度を上げるうちにどんどん岩岩が現れてくる。人を寄せ付けないそんな雰囲気だった。リーダーが三の窓、小窓、マッチ箱、白ハゲ、赤ハゲといろんなことを教えてくれる。とにかくネーミングがおもしろい。剣の歌の意味がわかったような気がしました。

 

 翌日、さあ今日はあこがれの剣にむかう。リーダーは朝から笑わせてくれる。緊張を和らげてくれているのだろうか。ありがたい。少しのアップダウンが続くと岩と鎖が現れる。いよいよ。剣岳の背中にのったようだ。鎖場はほとんど使うことなく登れる。下りはこわいなと思いながら高度をあげていく。山頂に立った時は感無量。やった~、剣岳初登頂。仲間と握手をかわす。

 

 登ったら降りなければならない。カニのよこばいが待っている。渋滞中。カニのヨコバイでは足場はしっかりしていたが、なにが起こるかわからないのでセルフビレイをしながらトラバースしていく。高度感はすごい。人はどうしてこんなところを歩きたがるのだろう・・・そういうわたしもだが。

 本剣の次に前剣が現れ、そのあとに一服剣。よくそういう名前をうまくつけたもんだと感心してしまう。岩から離れ、剣御前小屋まではハイマツ地帯をやややぶこぎみたいに歩く。変化のある山であきない。疲れがでてきた頃、前を歩いていた仲間から小屋がみえたという声。今日もよく歩いたな~と自分に感心してしまう。

 

 長男に剣岳登頂成功とメールをしたら「おめでとう、満足せずさらなる高みにむかいなはれ」と返信がくる。ひと目も気にしないで泣いてしまった。どうも年をとると涙腺が弱くなって仕方ない。

 目標だった剣岳の山行が終わった。次なる目標はどこにおこう。山にいこう、という気持ちがわたしの元気の素。面白くて愉快で厳しさも兼ね備えているリーダーに感謝いたします。ありがとうございます。そして一緒に苦楽をともにし、一緒に歩いてくれた仲間に心からありがとうございました。

                                                              記:S.Kさん