第9回自然と親しむ子ども山登り教室(燕岳)山行報告
実施日 山名 参加者 会員 障害者 4名 健常者 10名
平成27年8月7日~9日 燕岳 合計 16名 会員外 障害者 0名 健常者 2名
コースタイム:
8/8 中房温泉(6:30)…第二ベンチ(7:50-8:05)…合戦小屋(10:10-10:40)…燕山荘(12:10-13:20)
   …燕岳(13:50-14:10)…燕山荘(15:00)
8/9 燕山荘(6:25)…合戦小屋(7:15-7:40)…第三ベンチ(9:00-9:10)…中房温泉(10:55)
天気:
8/8 晴れ後曇り
8/9 快晴

☆8月8日

 昨日、中房温泉まで来て、1泊した。子どもたちもいくつかの温泉に入ったが、K君のお父さんは、全ての温泉に入ったらしい。ここの温泉は、12ほどあるが、全て源泉が違うらしい。岩風呂が一番良かったそうだ。宿に到着してすぐ、K君の登山靴の底がはがれるアクシデントがあり、テーピングで対処しようと思ったが、小屋の方が麓の山用品店まで車で往復してくださるということで、大変助かった。中房温泉のみなさまに感謝です。

 

 宿の朝食は6時30分と遅いため、昨晩弁当を作っておいてもらう。それを食べ、出発準備を済ます。夜行で来る人たちは、バスやトイレの混雑を避けるため、穂高駅からタクシーで宿まで来てくれる。ところが、夜行で来る人たちと早く会いたいと2人の子どもが迎えに行ってしまう。誰にもそのことを伝えていなかったため、浴槽の中でおぼれているのではないかと、確認して回っていると、ようやく戻ってきた。

 

 全員揃って、中房温泉の登山口から登り始める。ここの登りは急坂が続くため、登りはじめは意識してゆっくり登る。それでも、順調なペースで登っていく。

 

 第一ベンチに着くと、子どもたちは早速水場に行って、水遊びをしていたようだ。第二ベンチまでは700mのため、比較的早く着く。今日は猛暑になる予報だったが、登山道は木陰になっていて涼しい。時折吹き抜ける風が心地よい。

 

 第二ベンチから第三ベンチまでは長かったと思ったが、今回はあまり感じない。子どもたちも元気で順調に登ってきている。富士見ベンチでは、残念ながら富士山は見えなかった。

 

 富士見ベンチを過ぎると次第に展望が良くなってくる。横通し岳方面が見え、次に大天井岳が見えるようになる。その頃になると、登山道の傾斜も落ち、緩やかになってくる。しかし、樹高が低くなるにつれ、直射日光も時折差してくるようになる。そうなると、さすがに暑い。

 

 対岸の有明山山頂と自分のいる場所の高さを比較しながら登ってきたが、そろそろこちらの方が高くなってきた。すると、もう合戦小屋は近い。

 

 合戦小屋に着くと、すぐにスイカを食べる。私は一切れ買い、半分をSちゃんにあげる。大きなスイカはしっかり熟し、甘くておいしい。甘い水分が体にしみいるようだ。

 

 合戦の頭への登りにかかると、高山植物が次々に現れる。ウサギギク、ハクサンフウロ、モミジカラマツなどなど。そして、槍ヶ岳も見えるようになる。しかし、直射日光が当たるようになり、急に暑くなる。ここの登りで、先頭と最後尾で少し間が空くようになってきた。Sちゃんは足が痛いと言い、鼻血も出てきた。急な暑さに参ったのだろう。Y君も遅れるようになってきた。

 

 合戦の頭からは、今まで見えなかった餓鬼岳、唐沢岳、針ノ木岳、蓮華岳が見えるようになる。これから登る燕岳と燕山荘も見えてくる。さあ、もうひとがんばりだ。

 

 ミヤマリンドウやチングルマの綿毛を楽しみながら、緩やかな尾根を登っていく。登るにつれて、鹿島槍ヶ岳が見えるようになり、穂高連峰も見えるようになる。花崗岩の岩場を過ぎ、燕山荘の下をトラバース気味に登る。ここのトラバースが今回、一番要注意の場所だ。全員、無事に通過する。

 

 小屋前の稜線に到着すると、反対側の展望が一気に広がる。K君のお父さんが「なんだこれは!」と驚いたのが印象的だった。夏でも残雪を抱いた山々が視界いっぱいに広がる世界は、平地や低山では味わえない非日常の世界だ。はじめて出会ったら、誰もが感動するだろう。

 

 小屋の受付を済ますと、小学生には燕岳の登頂証明書を授与してくれるという。スタッフが証明書を読み上げ、先に付いた3人の子どもたちに授与してくれる。少し遅れて着いたY君は、一人だけで受け取った。

 

 小屋で昼食を摂った後は、燕岳山頂目指して出発する。早速、コマクサが迎えてくれる。ただ、旬の時期を過ぎているものが多く、しおれていたり痛んでいる花がほとんどだった。

 

 左手に野口五郎岳、三ッ岳、烏帽子岳、そして水晶岳、鷲羽岳、三俣蓮華岳、双六岳を見て、後方には、槍穂高連峰に笠ヶ岳、大天井岳、常念岳などを見ながらの登り。燕岳の山頂が次第に近づいてくる。山頂直下で先頭をK君、M君、Kちゃんに譲る。

 

 山頂に到着すると、今まで見えなかった剣立山方面もよく見えるようになる。手前には来た燕岳もある。子どもたちも大人も全員登頂できた。4月の陣馬山から始めて、8月に最終目標の燕岳に登頂できた。感慨もひとしおだ。子どもたちは、この山登り教室に、他の予定より最優先で参加したいと言ってくれた。子どもたちのこの思いが、好天に恵まれた中での登頂を達成させてくれたのだろう。

 

 山頂で集合写真を撮った後は、北燕岳手前のコマクサのお花畑に向かう。これは全員に通知していなかったことで戸惑った人もいたようだが、サプライズになったようだ。ただ、Kちゃんの靴底が完全にはがれてしまった。ここではどうしようもないので、テーピングのテープでぐるぐる巻きにして対処した。

 

 燕山荘に戻る途中、小さな女の子がお父さんと一緒に歩いていた。聞くと3歳らしい。お父さんの手助けがあったとは言え、登頂したことに驚く。

 

 私は先頭グループの子どもたちと眼鏡岩の前で写真を撮ったり、冗談を言い合ったりして燕山荘に戻る。小屋に着いて、大人はのどを潤し、子どもたちはトランプに講じる。

 

 夕方になると、小屋の周囲は、雲に覆われて夕日や夕焼けは見られなかった。それでも、20時頃には空は晴れ上がり、ほぼ満天の星空が見えた。夏の大三角を作ること座のベガ、はくちょう座のデネブ、わし座のアルタイルが天頂付近に広がっている。天の川が見え、北には北斗七星とアークトゥルスも見えている。カシオペアも良く見える。流れ星が見えなかったのは残念だが、みんな満足して部屋に戻って眠りにつく。

 

☆8月9日

 4時半からの1番目の朝食を摂れるよう、3時半過ぎに起き、食堂前に行ってみるとまだ誰も並んでいなかったので安心して、4時少し前に行ってみるともう30人近く並んでいる。スタッフの方に聞くと代表者だけではなく全員で並ばなければならないとのこと。Eさんに、みんなに伝えていってもらう。

 

 しかし、なかなか揃わない。10人くらいしか揃わなかったが、スタッフの方が大目に見てくださり、16人分の席を確保してもらえる。早く来て欲しいとやきもきしながら食事を摂る。食堂の外で並んでいる人たちの目を気にしながらなので、どこに食事が入ったか分からないが、全員揃ってホッと一安心。しかし、K君は気持ちが悪いということで、食べることができない。早朝に起きた影響ではないかと思うが、その後も調子が良くないので、出発前に順天堂大学の診療所に行って、医師に診てもらい、吐き気止めを処方してもらう。

 

 食後は、外に出て日の出を待つ。妙高山などの頸城山群、上越方面の山々、浅間山、八ヶ岳、富士山、南アルプスがよく見えている。鹿島槍上空の雲も赤く色づいていた。

 

 ご来光を見て、写真撮影を済ませて、出発準備にかかる。K君も何とか歩けそうだ。

 

 名残惜しい風景を心に刻み、小屋を後にする。小屋下のトラバースを慎重に通過する。合戦尾根上の岩場も通過。合戦の頭で最後の展望を楽しみ、合戦小屋に下って行く。この頃には、調子の悪かったK君も元気になってくる。

 

 登りでは遅れ気味だったY君も元気に下り、M君とKちゃんは最初から最後まで元気だった。今年、初登山で参加した中2のSちゃんも、過去4年間の経験を生かして元気に下山してきた。

 

 登山口にある温泉で汗を流してさっぱりする。今回の登山が、子どもたちの成長の一助になるだろうと確信しつつ、穂高駅から混雑している電車に乗り込んだ。

 

                                                                 記:網干