個人山行(槍ヶ岳)山行報告
実施日 山名 参加者 会員 障害者 1名 健常者 1名
平成30年4月28日~30日 槍ヶ岳 合計 3名 会員外 障害者 0名 健常者 1名
コースタイム:
4月28日 新穂高温泉(7:05)…穂高平(8:10-8:35)…白出沢(9:25-9:35)…
       滝谷出合(12:15-12:35)…槍平(15:00)
4月29日 槍平(4:35)…飛騨乗越(9:10)…槍ヶ岳山荘(9:50-11:10)…槍ヶ岳(12:50-13:05)…
       槍ヶ岳山荘(15:30)
4月30日 槍ヶ岳山荘(5:45)…ババ平(7:50-8:00)…槍沢ロッジ(8:25-8:40)…
       一ノ俣(9:30-9:40)…横尾(10:35-11:00)…小梨平(13:15)
天気:
4/28 快晴
4/29 快晴
4/30 晴れのち曇り

★4月28日
 今回は、弱視のKさんと数年前まで会員だったTさん、それに私の3人で槍ヶ岳を目指す。

 4月下旬とはいえ、25℃を超える日もあるこの頃。温暖化の影響が心配される。新穂高温泉の朝も、それほど冷えていないようだ。足湯につかりながら朝食を食べ、山岳警備隊の方に登山計画書を提出して出発する。

 しばらくは林道歩きとなる。穂高平への夏道を使えばよかったが、そのまま林道を歩いてしまい、少し遠回りとなってしまった。しかし、緩い傾斜なので、疲れは返って少なかったかも知れない。

 この付近は、ようやく芽吹きの季節を迎えたばかり。それでも、ゴジュウカラやヒガラ、コガラなどがさえずり、オオルリも見られた。野鳥たちの声を楽しみながら、林道を上る。

 穂高平は、牧場になっている。穂高平小屋の奥には、涸沢岳、南岳と共に、槍の穂先も見えている。あそこを目指して、今日、明日とがんばって登ることになる。

 抜戸岳や錫杖岳を時々見ながら林道を行くと、白出沢の出合に着く。ジャンダルムや天狗岳、間ノ岳などがよく見える。そしてここから登山道となる。

 最初は残雪もほとんどなく、夏道どおりだったが、次第に残雪が出てくる。滑ると疲れるので、Kさんにはアイゼンを付けてもらう。

 大きなデブリのあるブドウ谷とチビ谷を通過すると、滝谷の出合は近い。滝谷の出合にある滝谷避難小屋は、ちょうど10年前にYさんと一緒に泊まった所。あの時は、翌日、奥丸山への尾根に上がり、尾根通しに槍ヶ岳を目指した。私たち以外にこの尾根を登るパーティーはなく、二人だけで静かな登山を楽しんだ。懐かしい思い出がある。

 今回は、ここに泊まらず、槍平まで行く計画だ。滝谷出合からドームや雄滝を見て、さらに残雪の上を進んでいく。振り返ると、次第に、涸沢岳西尾根上にある蒲田富士が見えるようになり、涸沢岳もよく見えるようになる。さらに滝谷のドームや、以前登ったことのある第4尾根もよく見える。今日はすばらしい天気に恵まれた。

 重いザックが肩に食い込むが、そんなことに負けてはいられない。がんばって残雪の斜面を登っていく。沢の近くを通過すると、視界が開けて槍平に到着する。今は、槍平小屋は営業していない。無人の冬季小屋を利用する。水場は、近くのダケカンバの下を流れている水を利用する。はしごがかけられていて、2mほど下って水を汲む。雪を溶かす必要がないので、とても助かる。冬季小屋は、私たちの他に、3パーティー4人が泊まっていた。

★4月29日
 今日中に槍ヶ岳を登って横尾まで行くという単独行の女性は、1時頃出発していった。我々は3時に起床する。小屋の中で、湯を作り、朝食を摂って出発する。

 時刻は4時半。もうヘッドランプはいらないくらいだ。平坦な飛騨沢の残雪を登っていく。次第に傾斜が出てくるが、とても歩きやすい。振り返ると、北穂から西穂までの穂高連峰がよく見えるようになる。日の出を迎えたようで、涸沢岳の北側斜面に日が当たり始めた。今日も快晴の天気で迎えられた。

 緩い残雪の斜面を登っていく。登るにつれて乗鞍岳も見えるようになる。今登っている飛騨沢は、緩やかに右にカーブして、徐々に傾斜を増し、飛騨乗越へとせり上がっていく。登りが次第にきつくなるコースだ。

 千丈分岐点は、夏なら標識があると思うが、今は雪に埋もれて全く見えない。スマホのGPSで、その付近を通過したことを確認する。

 後には、抜戸岳と笠ヶ岳が見えるようになる。上部は日が当たっている。さらに登ると、双六岳も見えるようになる。傾斜は次第に急になり、飛騨乗越はすぐそこのように見えるが、なかなか着かない。トレースがまっすぐに伸びている。

 ようやく飛騨乗越から太陽が顔を出した。非常にまぶしくなる。ところどころ、夏道が見られるようになる。稜線はもう近い。

 飛騨乗越に到着すると、目前に大きな槍ヶ岳が姿を現す。常念岳や大天井岳方面も見えるようになる。笠ヶ岳の向こうには白山も見えるようになる。槍沢には、大勢登ってくる行列も見える。大喰岳からは、スノボーダーやスキーヤーが滑っている。さすがに格好良い。

 槍ヶ岳山荘に入り、受付を済ませて、昼食を摂り、少しゆっくりしてから山頂へ向かう。互いにロープでつなぎ合って、まずはスタカットで登る。私、Kさん、Tさんの順番。TさんにKさんの足下の指示をしてもらう。

 5年前にも個人山行で槍ヶ岳を目指したが、その時は、長い順番待ちと天候の崩れもあって、杭の出てくるところで引き返した。今年は、その時より、やや雪は少ないようだ。慎重に登って、杭の所まで来る。そこから山頂は目と鼻の先。今回は、それほど長い順番待ちはないので、さらに登っていく。

 杭の壁を登り、残雪に沿って登っていくと、山頂直下に2つ掛かるハシゴに到着する。ここを登り切れば、山頂だ。

 5年前、悔しい思いで引き返したKさんも、今回は、槍ヶ岳初登頂。ガイドさんと厳しい山行をしていたTさんも、槍ヶ岳は初めてだったらしい。二人とも、アイゼンを付けての槍ヶ岳登頂。本当にがんばりました。狭い山頂は慎重な行動が必要。祠の所に行き、他の方に写真を撮っていただく。

 登り以上に下りは危険で、時間が掛かることを予想していたため、周囲の風景写真をさっと撮り、すぐに下りに掛かる。ハシゴは難なく通過。少し急な残雪の所は、そこを避けて登りルートを下った人たちもいるが、こちらはロープを使っているので、残雪の所を下る。問題なく、岩場の鎖に到着。ここからも、スタカットで鎖を利用しながら下っていく。

 山頂の往復に4時間20分もかかったが、無事に登頂を果たすことができた。槍ヶ岳が早く終わったら、大喰岳も往復しようと思っていたが、15時半からでは遅いのでやめておく。山荘に入り、自炊室で登頂祝いとする。食後、談話室に行ってみたが、談話している人は誰もいなくて、本を読んだりテレビを見たり、寝ている人などだけで、談話できる雰囲気ではないので、自炊室に戻る。自炊室にいた人たちと一緒に歌を歌い、楽しいひとときを過ごす。

★4月30日
 3時半に起床して朝食を摂る。トイレなどを済まして外に出ると、ちょうど御来光が上がってきたところ。浅間山の左側から登ってきた。槍ヶ岳とのコラボも写真に収める。昨日は見えなかった富士山が、今日はよく見える。南アルプスや八ヶ岳もよく見えている。

 すばらしい展望を脳裏に焼き付け、槍沢の下りにかかる。下りはじめは最も急なため、腿の負担が大きい。ザックの重さは、まだ20kg近くあるだろう。ザックの重みも腿に負担をかける。

 それでも、下りは重力に逆らうわけではないので、順調に下っていく。シリセードの後があるので、滑ってみたが、まだ雪が堅く締まっているため、スピードが出すぎる。堅く氷った雪の塊で、尾てい骨を打ってしまい、座ると強い痛みを感じるようになってしまった。

 それでも歩くことには問題なく、ぐんぐん下っていく。登ってくる人たちは、日が当たるようになり、暑くてたまらないようだ。半袖の人もいる。

 日陰に入ると、そこは大曲。槍沢の最後の展望をしっかりと見て、ババ平へと下っていく。ババ平からさらに下り、後に槍ヶ岳が見えるようになると、槍沢ロッジに到着する。今日は、早く上高地に着いたら小梨平の風呂に入って帰りたいとの思いがあり、みんながんばって下っている。ロッジでの休憩もほどほどに先を急ぐ。

 ロッジから先も滑ると疲れるので、Kさんにはアイゼンを付けてもらったが、岩の箇所が多くなってきたので、一ノ俣からはアイゼンを外してもらう。外した方が歩きやすい箇所が多くなったことで、歩くタイムも速くなった。

 雪渓も少なくなり、エメラルドグリーンの色合いで流れる槍沢は、雪解け水を集めて、ゴーゴーと流れている。前穂高岳が見えるようになると、横尾に到着する。あとは、林道歩き。ただ歩くだけだが、この帰りの林道は、いつもザックの重みで、肩が猛烈に痛くなる。それでも、我慢して、急いで歩く。いつもならまだ咲いていないニリンソウも、せせらぎの横で、かなり多く咲いていた。

 予定時間より1時間以上前に小梨平に着いたので、入浴して帰ることにする。入浴後、バス停に行ったが、予定のバスは満席とのこと。仕方なく人バス遅らせる。そのために、スーパーあずさは2つ後になってしまった。

 帰りは遅くなってしまったが、登頂を終え、全員無事に帰ってこられた満足感を胸に帰路についた。

                                                             記:網干