大雪山山行報告 |
NO. |
日付 |
山名 |
参加者 |
会員 | 障害者(視障) | 1名 |
健常者 | 5名 |
1 |
平成17年6月30日〜 7月4日 |
大雪山 | 合計 6名 | 会員外 | 障害者 | 0名 |
健常者 | 0名 |
コースタイム: 7/1 銀線台ヒュッテ(5:00)…コマクサ平(7:05,7:25)…赤岳(9:10,9:35)… 小泉岳(10:10,10:35)…白雲岳(11:20,11:40)…白雲岳避難小屋(13:05) 7/2 白雲岳避難小屋(4:40)…高根ヶ原分岐(6:15)…中別沼(8:35,9:00)…忠別岳 避難小屋分岐(11:05,11:35)…五色岳(12:30,12:40)…化雲岳(14:20,14:25)… ヒサゴ沼避難小屋(15:10) 7/3 ヒサゴ沼避難小屋(4:30)…トムラウシ山(9:20,9:35)…前トム平(12:00)… コマドリ沢登り口(13:05)…カムイ天上(14:40)…短縮コース分岐(15:35)… 東大雪荘(17:15) |
天候: |
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★6月30日 旭川駅前にある西武デパートのスポーツ用品売り場で、ガスカートリッジを購入して、バスで層雲峡に向かう。層雲峡からは、タクシーで銀線台ヒュッテに向かう。途中、流星の滝や銀河の滝を見物させてもらう。また、ヒュッテの手前で、タクシーの運転手さんが、車を止め、ここからの朝の雲海が見事だと教えてくれる。 ヒュッテに着き、豪勢な夕食を食べる。このヒュッテは、今年で営業をうち切るそうで、記念にということで、フクロウやキタキツネなどの描かれたコースターのようなものをもらう。とても大らかそうで、親しみの持てる管理人さんだった。 ★7月1日 小屋から作ってもらったおにぎりを食べ出発する。小屋の前には、早速エゾイチゲが咲いていた。歩き始めるとすぐに雪が現れ始め、雪解けのところにはふきのとうが顔を出していた。 少し登ると、イソツツジの群落やミツバオウレンが現れ始めた。第1花園の付近は多くの残雪があった。雪の斜面をトラバース気味に登るため、私は弱視のMさんとロープで結び合い、登ることにする。他の人たちは、軽アイゼンを付けて登る。アイゼンを付けていると、ウソが真っ赤なほっぺをみんなに見せてくれた。ショウジョウバカマも近くに咲いていた。 慎重に雪渓を通過すると、第2花園付近になる。ナナカマドの樹林の中を歩いていると、突然赤い鳥が横切った。番のギンザンマシコだった。次の雪渓を登りきると、コマクサ平だった。コマクサやチシマキンレイカが咲き始めていた。前日、銀線台ヒュッテで同宿した方は、蝶の専門家で、昨日ここまで来て、高山蝶のウスバキチョウなどをたくさん見たというので、私たちもぜひ見たいと目を皿のようにして探すが、見つけられなかった。 コマクサ平からは、ちょっと急な雪渓を登る。登り着いたところが奥ノ平だ。イワウメの群落がすばらしく、赤く染まっているのはミネズオウだ。さらに登ると、キバナシャクナゲの群落があり美しい。まだ、咲き始めて間もないのだろう、旬で生き生きとしている。 赤岳に着くと、展望が一気に開ける。黒岳から北鎮岳に至る山々が手に取るように見える。足下には、エゾタカネスミレが咲き、エゾノツガザクラも咲き始めていた。 赤岳から小泉岳の間は、どこまでも続くイワウメのお花畑だ。そして、ホソバウルップソウも群落を作っている。そしてメアカンキンバイもたくさん咲き、白と青と黄色の花が百花繚乱だ。広い小泉岳の山頂に立つと、目の前に白雲岳が見え、南の方には遠くこれから向かうトムラウシ山が見えてきた。 小泉岳からコルに下ると、小さな子どもがいた。この子は、4歳でおじいさんと2人で来たそうだ。コルにザックを置いておくとカラスやキタキツネにいたずらされるので、重いのを我慢してそのまま担いで白雲岳に向かう。 この登路にはエゾオヤマノエンドウやハクサンイチゲも咲いていた。一登りで山頂直下の平坦地に出るが、ここはアースハンモックという周氷河地形や湖岸段丘と呼ばれる地形だ。ここには雪解けが進む5月中旬に忽然と湖が現れ、6月上旬には消えるという。これは、積雪の少ないこの場所が冬の厳しい寒さに晒されているため、土の中の水分が凍り付く「凍土」という現象が深く関わっているという。凍土があるために、雪解けの水は土中に染み込まず、湖となる。しかし気温が上がると凍土が溶け出し、水が土中にこぼれるように染み込んでいき、湖はあっけなく消滅する。ほんの短い間だけの不思議な現象、自然の営みのおもしろさに驚く。 最後の雪渓の登り口にザックを置いて、空身で山頂に向かう。山頂に着くと、旭岳が正面に見える。手前の雪渓と地面の織りなす縞模様が芸術的ですばらしい。この付近には、高山蝶のウスバキチョウも舞っていたようだ。遠くのトムラウシ山などの展望を楽しみ、引き返す。さっきの子どももおじいさんと2人で登ってきた。4歳で少し急な雪渓の上を歩く姿に、将来が楽しみに感じた。 コルから避難小屋に向けて下り始めると、アゲハチョウが地面にへばりついて飛び立てないでいる。よく見ると黒地に緑色と青色の蛍光塗料の粉末をちりばめたようなその美しさは、ミヤマカラスアゲハであろうと思われた。残念ではあるが、ここで寿命を全うすることになるだろう。 雪渓を下り始めると白雲岳避難小屋が見え始めた。丘の上にぽつんと立っていて何とも趣のある小屋だ。夏の間は管理人さんがいるので1000円を払い泊めてもらう。しばらくして小屋の外に出ると、シマリスが走り回って遊んでいた。 ★7月2日 小屋から少し下り、どこまでも平坦な高根ヶ原に向かう。足下には、ジンヨウキスミレも咲いていた。エゾノハクサンイチゲもきれいに咲いていた。高根ヶ原は、本州の山にはない非常に広い平原だ。ここは冬の間、風が強いため雪が積もらず、低温に晒される。そのため凍土になるが、夏の間も完全に溶けきらず、永久凍土の部分があるという。 この平原はまた、どこまでも続くお花畑だ。チングルマ、イワウメ、エゾノハクサンイチゲ、キバナシャクナゲなどの白系の花、メアカンキンバイやミヤマキンバイ、そしてキバナシオガマなどの黄色系の花、ミネズオウやエゾノツガザクラ、エゾコザクラなどの赤系の花、そしてホソバウルップソウやエゾオヤマノエンドウの紫系の花と、次々に現れて、とぎれることがない。もうちょっとした花園では驚かなくなってしまったことが、残念といえば残念か。 高原温泉分岐を過ぎ、なおも平坦な尾根を行くと、ようやく中別沼に着く。少し離れたところにエゾノリュウキンカが咲いていた。小さな水たまりでYさんがサンショウウオを発見した。帰って確認してみるとたぶんエゾサンショウウオではなかったかと思う。 ここから忠別岳への登りになる。少し遠くに鳥がいるというので見ると、鷲鷹の仲間だ。双眼鏡がなくて、はっきり分からなかったが、のど元の白さからハヤブサではなかっただろうかと思う。さらに、なだらかだが長い登りを頑張って忠別岳に立つ。山頂付近もコマクサなど多くの花が咲き、すばらしいところだった。これから向かう五色岳、化雲岳の遠さにみなさん驚くが、下り始めるとそれほどでもないように思われた。しかし、ハイマツが行く手をふさぎ、まさにハイマツの海を泳ぐような道となる。忠別岳避難小屋への分岐に着くと、ヒサゴ沼から来た人たちと出会った。なんと、今日初めて会う登山者だった。これから先もハイマツの海がすごいという。足下にはミツバオウレンも咲いているが、小さな虫がたくさんいるハイマツの中は、大変だ。ザックが引っかかり、引き替えされたりしながら、ぐいぐい登ってやっと五色岳に到着する。ハイマツもここで終わりかなと思ったが、まだまだ続いた。それでも頑張って歩いていると、木道が現れ、化雲平に到着した。ここは、キバナシャクナゲやホソバウルップソウ、エゾコザクラなどすばらしいお花畑だった。 ここから、化雲岳に登らずトラバース道を行くことにしたが、雪渓でガスに巻かれてしまい道が分からず、結局化雲岳の山頂に立つことになった。化雲岳から神遊びの庭を抜け、雪渓を下ってヒサゴ沼避難小屋に着く。先客が一人いた。この方は、石狩岳の方から縦走してきたらしい。 私たちが外で夕食の準備をしていると、先客の方が来て、雪渓にヒグマがいるという。よく見ると、小さな四つ足の動物が、すごいスピードで雪渓を駆け上っている。先客さんの話では、避難小屋の前がヒグマの通り道だったが、私たちがいたため、避けるように雪渓を登っていったのだそうだ。突然のことで、写真にもビデオにも収められなかったが、山中でヒグマに会い、私は得をした気分だった。 ★7月3日 今朝は、雲一つないすばらしい天気だった。Yさんご夫妻は、夜外に出て、満天の星空を楽しんだそうだ。天の川が悠然と流れていたらしい。 朝食を済ませ、ヒサゴ沼の畔を歩いて、さらに急な雪渓を登って、尾根に出る。振り返るとヒサゴ沼とその向こうに見える石狩岳が美しい。岩場では、ナキウサギが「キッキッ」と鳴いているが、姿は見えなかった。 ここから大きな岩がゴロゴロある視覚障害者のMさんにとって危険なところが次々に現れ始める。とにかく石から落ちないよう、慎重に進む。厳しい場所になったり、登りにかかるとカッコウが鳴き、なんとも「アッホー、アッホー」とバカにされているようで、力が抜ける感じだ。しかし、岩場の間に現れるお花畑は、今までに勝るとも劣らず、すばらしかった。日本庭園やロックガーデンを越えると、トムラウシ山の山頂が目の前に現れる。その下には、北沼が残雪を落とし込み、空の青さと雪の白さをブレンドしてエメラルドグリーンに見えている。山頂へ向かう道から見下ろすと、手前のお花畑と青い北沼、そして残雪の白がすばらしい風景を作り出していた。 岩の道を慎重に越え、山頂手前の大岩を手助けしながら超えると、そこはトムラウシ山の山頂だった。これから向かう方向には、山頂を雲に隠した十勝連峰が見えていた。左手に目を落とすと、そこはお釜となっていて、初めてトムラウシ山が古い火山であることを知った。記念写真を撮って下山にかかる。途中で出会った人たちから、トムラウシ山の厳しさをいろいろ聞いていたので心配していたが、さほど悪い箇所もなく、高度を下げていく。山の南面もイワウメなどの花が多い。トムラウシ公園から一登りで尾根に上がり、そこで昼食にした。さらに下って前トム平から岩場の急な斜面を下る。近くでノゴマやビンズイが盛んにさえずり、ミソサザイも姿を見せてくれた。コマドリ沢に下り立つ頃から雪渓となり、みなさんにはアイゼンを付けて下ってもらう。 しばらく行くと、最近できた道が右側の尾根に向けて登っていた。途中で聞いた歩きにくい道だったが、特に悪いところはなかった。尾根に上がると快適な道が続いている。ただし、傾斜が緩くて、いつまでたっても下っていかない感じだ。ようやくカムイ天上に着き、今晩の宿「東大雪荘」に電話を入れる。 ここからしばらく行くと短縮コースを左に分ける。私たちは真っ直ぐ東大雪荘に向かう道を進む。しかし、この道が悪かった。人が歩いていないようで、次ぎ次ぎに大きな倒木が現れる。木の下をくぐったり、またいだり、脇の笹藪から避けたり、20回くらいはあっただろうか、疲れ果てもううんざりと思う頃、ようやく傾斜が強くなって下り始めた。下り初めてからは早く、林道が現れ、それを越えて少し歩くと東大雪荘だった。 疲れた体を温泉で癒し、何日ぶりのビールだろうか乾杯して労をねぎらい合う。さすがに久しぶりのビールは五臓六腑に染み渡り、すぐに酔いが回ってきた。 ★7月4日 重い荷物と長い行程を歩き抜き、お疲れさまでした。瞼を閉じると、どこまでも続くお花畑がよみがえってきそうです。 記:網干 |