第2回自然と親しむ子ども山登り教室(蝶ヶ岳)山行報告
NO.
日付
山名
参加者
会員 障害者
2名
健常者
7名
1
平成20年8月1日〜3日 蝶ヶ岳 合計 11名 会員外
(賛助員含む)
障害者
0名
健常者
2名
  コースタイム:
8/1 上高地(13:35)…徳沢(17:15)
8/2 徳沢(7:15)…2,000m付近(8:35-8:50)…長塀山(11:20-11:30)…
   蝶ヶ岳(13:00-13:30)…蝶ヶ岳ヒュッテ(13:35-14:00)…蝶槍(14:40-14:55)…
   蝶ヶ岳ヒュッテ(15:45)
8/3 蝶ヶ岳ヒュッテ(7:00)…長塀山(8:05-8:20)…徳沢(11:05-11:30)…上高地(13:05)
天候:
8/1 晴れ、
8/2 快晴後晴れ、
8/3 晴れ

★8月1日
 暑い東京をあとに、スーパーあずさ、松本電鉄、路線バスを乗り継いで、上高地に入る。上高地は、さすがに涼しく別天地だ。

 昼食を食べ、河童橋でみんなで記念写真を撮る。河童橋からは、梓川右岸の遊歩道を歩いて、明神に向かう。木道などから子どもたちが落ちないように注意しながら歩く。途中、清流ではイワナも見られた。

 明神橋に着くと、明日登る蝶ヶ岳が梓川の向こうに見えた。明神橋は、吊り橋のため、良く揺れる。橋を渡って、少し歩くと、明神館だ。ここで休憩とする。Tさんたちが青リンゴを振る舞ってくださった。

 ここから徳沢に向けてさらに林道を歩く。徳本峠(とくごうとうげ)への分岐を過ぎ、急坂を登り、下りにかかった時、後で「痛いー!」という大きな声が聞こえる。振り返ると、K君が転んでいる。足も擦り傷を作っていたが、痛いのは右肘だということだ。肘の角度を少し動かしただけでも激痛が走るようで、動けないと言う。ここにじっとしているわけにはいかないので、徳沢にある診療所で見てもらおうと、頑張って歩こうと励ますが、なかなか立ち上がれない。立ち上がって少し歩いても、肘に響いて痛くて動けないという。困ったが、それでも、K君は頑張って歩き始めてくれた。

 速く歩けないため、NさんやJちゃんたち4人に先に徳沢に行き、遅れることを伝えてもらうことにした。

 K君は、少しずつペースも上がり、しっかりと歩き始めた。梓川が近づく頃、NさんとT君が徳沢から戻ってきた。診療所に状況を話してくださり、医師は状況からして脱臼ではないかということだった。

 徳沢に着いたら、すぐに診療所に行き、見ていただいた。完全ではないが、脱臼を治す処置をしていただき、かなり痛みが治まってきたようだ。しかし、登山を続けることはできず、早く下に降りて、レントゲンを撮ってもらわないといけないとのこと。先生にお礼をいい、ロッジに戻った。

 ロッジで今後の予定を話し合い、明日、K君にTUさんとTAさんが付き添って帰っていただくことにした。

 夜、K君と数人で、星空を見に外にでた。見える空の範囲が少しせまいため、星座までは分からなかったが、K君は、星の多さに感激していた。

★8月2日
 朝起きて、K君の右肘を見ると、少し腫れている。昨晩は、山に登りたいとまで言っていたK君だが、朝起きて、痛みが少し増していることであきらめがつき、悔しい思いを胸に帰ることにする。

 本隊は、朝食を済ませて、蝶ヶ岳に向けて出発する。K君は、登り口まで見送りに来てくれた。徳沢から見える前穂高岳に、「うわー、すごい」と感激していた。山は逃げないから、またいつか登ろう。

 徳沢からは、いきなりの急登が始まる。大きな段差も次々現れ、よっこらしょと越えていく。しかし、高度はぐんぐん稼げる。2000m付近の平坦地でゆっくり休み、さらに登っていく。幾分、傾斜は落ちたが、まだまだ急登は続く。2200m付近から右側にトラバースして尾根にでる。ここでまた休憩する。

 ここからは、今までと比較してぐっと傾斜が落ち、緩やかな登りとなる。途中で、Mさんが木の間から槍ヶ岳を見つけた。みんな感激している。二重山稜のような平坦地を過ぎると、長塀山に到着した。ここは三角点があるが、残念ながら展望がない。

 ここからは、いくつか小さな池とピークを越えていく。ミヤマキンポウゲやキヌガサソウ、ハクサンフウロ、クルマユリなどの高山植物も次々と現れてくる。

 妖精の池に到着すると、一気に高山植物が増える。ハクサンチドリ、テガタチドリ、ハクサンボウフウなどなど、すばらしいお花畑が広がる。

 さらに登ると、森林限界に飛び出し、窪地には残雪が残っていた。Yさんと子どもたちが雪渓まで行き、雪に触っている。この付近も、ハクサンイチゲ、クロユリ、チングルマ、アオノツガザクラなどのお花畑だ。

 窪地の上部からは、槍ヶ岳がはっきり見えている。穂高連峰も見え、歓声が上がり、しばし展望に酔いしれる。少し上に上がると、蝶ヶ岳ヒュッテが見えてくる。ハイマツ帯を登り、砂礫地を登ると、蝶ヶ岳の山頂に到着した。
 大滝山方面から来る、Hさんにコールを送ったが届いただろうか? 山頂で昼食とする。槍穂高連峰から常念岳、大天井岳などの大展望を欲しいままに食べる昼食は、何の変哲もないあんパンでも美味しいものだ。

 蝶ヶ岳ヒュッテで受付をしていると、Hさんが到着した。グッドタイミングでした。Hさんに聞くと、大滝山から蝶ヶ岳の間は、人が非常に少なく、しかもお花畑が続いて、すばらしいコースとのこと。いつか行ってみたいですね。

 ヒュッテに荷物を置き、予定通り蝶槍まで往復する。東側は雲で展望が得られないが、西側の槍穂高連峰は、時折雲に隠れることがあるものの、よく見えている。稜線漫歩の気持ちだ。稜線には、チシマギキョウやイワツメクサ、オヤマソバなどが咲いている。広い稜線が狭まって、少し盛り上がった岩のピークが蝶槍だ。ここまで来ると、常念岳が間近に迫り、槍ヶ岳も近づき、槍沢がよく見える。

 展望を楽しみ、記念写真を撮って、来た道を引き返す。残念ながらライチョウには出会えなかった。長いコースを歩いてきて疲れたHさんは、ゆっくり休みながら行きたいという。子どもたちは、Hさんと一緒にいたいと、ゆっくり歩いている。

 ヒュッテに着いたら、子どもたちは長塀山方面にあった小さな雪渓に遊びに行きたいと言う。Yさんが、子どもたちを連れて、一緒に遊びに行ってくれた。

 夕食後、夕日を撮影しようと外にでたが、雲が多くあまり良い状態ではなかった。しかし、それから30分位したら、「外の景色がすごい」という言葉を聞き、カメラを持って外にでた。穂高岳上空の雲が真っ赤に色づき、この世のものとは思えない光景を作り出している。シャッターを何回も切るが、すばらしい光景は一瞬にして消え去っていった。自然は、どんなすばらしい光景も、一瞬にして消してしまう。執着心に囚われることのない自然には、ただただ頭が下がる思いだ。

 日没後、暗くなるのを待って外にでたが、雲が多く残念ながら満天の星空は望めなかった。翌朝に期待する。

★8月3日
 明け方の3時頃、Nさんが満天の星空が見えるというが、4時頃に出ることにして、もう少し休む。

 4時頃、Jちゃんを起こし、外にでてみるが、東の空が白みはじめていて、もう満天の星空とはいかなかった。それでも、都会では見られない星空に、Jちゃんは喜んでいた。

 星を見たあと、そのまま起きて、小屋の中で日の出を待つ。4時半頃、日の出を見るために、蝶ヶ岳の山頂まで行く。槍穂高連峰もよく見え、今日もすばらしい天気だ。南の方には、富士山や南アルプスもよく見えていた。八ヶ岳や浅間山、頸城の山々も見える。乗鞍岳や御岳も見えている。

 浅間山の左側が眩しくなり、おごそかな御来光が姿を見せてきた。ビデオや写真を撮り、朝日に染まった西側の槍穂高連峰にも目を向ける。山の夜明けのいつもの光景だけど、やはり心洗われる一時だ。

 ヒュッテに戻って、朝食の順番待ちをする。1時間近く待って、朝食にありつき、出発の準備をする。

 小屋の前で、屈伸や足のストレッチなど簡単な準備運動をして出発する。山頂に立ち寄り、記念写真を撮って、名残惜しい展望に別れを告げ、長塀尾根を下る。子どもたちは、昨日遊んだ残雪のところで、マスターした雪滑りを楽しんでいる。

 登りと同じコースをぐんぐん下り、長塀山を過ぎ、2000m付近の平坦地から、急な斜面をどんどん下っていく。やがて、梓川が近づき、沢音が大きくなると、徳沢園の赤い屋根が見えてくる。気を緩めず、慎重に下っていき、徳沢に11時5分に到着する。徳沢から上高地に向けて歩き始めると、アオジが近くで歌っていた。ビデオや写真に収め、子どもたちにも見てもらう。

 明神に向けて少し行ったところで、Yさんが神戸に帰るバスに遅れないように、みんなと別れて先に行ってもらう。Yさんには、3年間、とてもお世話になった。今回も、子どもたちのお兄さん役として、一緒に遊んでいただいた。彼が神戸に行ってしまうのは、山仲間アルプとして大きな痛手だが、ふるさとの神戸でまた充実した人生を送って欲しい。そんな思いを胸に、Yさんと別れた。

 私は、バスの予約を取るため、明神から先を急ぎ、バスの整理券を確保して河童橋まで戻った時、みんなと合流した。アルペンホテルのお風呂に入り、バス停の売店の2階にある食堂で、遅い昼食を取る。

 新島々と松本の乗り継ぎが悪く、1時間半ほどロスしてしまい、松本18時35分のスーパーあずさで新宿に向かった。
 「第2回自然と親しむ子ども山登り教室」は、いろんなことがありましたが、これで全日程を終了しました。子どもたちにエールを送り、協力していただいた全てのみなさまに深謝申し上げます。本当にありがとうございました。

記:網干

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