実施日 | 山名 | 参加者 | 会員 | 障害者 | 0名 | 健常者 | 6名 |
平成26年7月19日~21日 | 北穂高岳・奥穂高岳・前穂高岳 | 合計 6名 | 会員外 | 障害者 | 0名 | 健常者 | 0名 |
コースタイム: 7/19 上高地(7:45)…横尾(10:50-11:15)…本谷橋(12:20-12:45)…涸沢(14:50) 7/20 涸沢(5:50)…南稜(7:45-8:00)…北穂高岳(9:40-10:05)…最低コル(11:35)… 涸沢岳(13:20-13:40)…穂高岳山荘(14:05) 7/21 穂高岳山荘(5:30)…奥穂高岳(6:20)…最低コル(7:40)…前穂高岳(8:50-9:00)… 岳沢(11:50-12:15)…河童橋(14:30) |
天気: 7/19 曇り時々雨、 7/20 曇り、 7/21 快晴 |
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★7月19日 当初、西穂から奥穂縦走の予定だったが、このコースは雨だからコースを変えるという選択が難しいため、今回のコースに変更した。このコースのポイントは、北穂から涸沢岳の間だが、もし雨が強い場合は、涸沢から直接穂高岳山荘に登るという選択ができるため、このコースに変更した。
上高地に到着すると、曇り空だった。50回以上、数え切れないほど上高地を通過している私だが、Tさんは今回が初めてという。山を愛するものの多くが憧れる穂高連峰との対面もはじめて。初々しい気持ちで歩き始めたことだろう。
時折日も差すが、雨も降る夏山らしい天気の中で、横尾に到着する。センジュガンピなどが咲いていた。横尾大橋を渡って涸沢に向かう。よく見えていた屏風岩も雲がかかるようになった。雨も降り始めた。
それでも前穂高岳が見える時があり、涸沢のモレーンも見えてきた。氷河地形なども山に登る人なら誰でも知っていると思っていたが、登山経験の少ないTさんにとっては新鮮な知識だったようだ。より高くより困難な山への挑戦だけ出なく、野鳥のことや植物のことも含め、いろんなことを学ぼうとするその姿勢に深く頭が下がる思いだ。
私のコンタクトが外れるトラブルもあったが、雪渓を登って涸沢ヒュッテに到着する。涸沢ヒュッテへの最後の階段を上りきった頃、Nさんが足をつってしまった。しかし、みんなの介助によって部屋まで行く。濡れた雨具などをストーブの回りで乾かす。小屋の方に聞くと、明日も今日のような天気だという。できるだけ午前中に穂高岳山荘に着けるようにしたいと思う。
★7月20日 朝目が覚めたら奥穂に日が差していた。しかし、すぐに雲に覆われる。朝食を食べて早々に出発する。
涸沢の雪渓を登り、北穂沢に入っていく。まだ下部は夏道が出ていない。雪渓に切られた階段を上る。今回、アイゼンも持ってきたが、アイゼンは付けず、ピッケルだけで登っていく。せっかくピッケルを持ってきたので、小さな枝沢でグリセードを楽しむ。TさんとYさんも楽しんだ。
昨年も北穂高岳に登ったが、今年は昨年とかなり違う。昨年たくさん咲いていたコバイケイソウは、今年は全く咲いていない。残雪は、昨年より1週間早いが、今年の方が多い。南稜に登る鎖場の手前にまだ雪渓があり、階段が切られていた。
鎖場もほとんど鎖を使わずに通過し、南稜に上がる。昨年見つけたライチョウ岩を他の登山者にも教えてあげた。っこを過ぎるとライチョウの親子が現れた。少し離れていたが、多くの登山者が写真を撮った。そして、みんな上に登って行ってしまうと、ライチョウは私の方に近づいてきて、わずか2mくらいの距離のところで、母ライチョウは4羽の雛を自分の腹の羽毛の中に入れてあげている。雛たちにとってはこの季節でもまだ寒いのだろう。かわいい雛たちと親の優しさを存分に感じて、先行したみんなのもとに登っていく。
テント場を過ぎ、縦走路との合流点に着く。ここにザックを置いて、北穂高岳を往復する。残念ながら槍ヶ岳は姿を現してくれなかった。それでも北穂小屋に着くと、東稜のゴジラの背やキレットが見えた。Iさんが期待していたカレーライスはまだ昼の時間でないので、注文できなかった。それでもおいしい珈琲をいただき、 しばしのんびりする。
山頂に戻ると、滝谷がばっちり見えている。なつかしいドーム北壁のルートもよく見えている。松涛岩や北穂南峰もよく見え、その左奥に奥穂も姿を現している。もしかして槍もと思ったが、姿を見ることはできなかった。
いよいよ涸沢岳への縦走路に向かう。次々に現れる岩場、と言っても全てが岩の山なので当然なのだが、両側が切れ落ちた狭い尾根やトラバースを繰り返し歩いていると、やっぱり岩山は自分の山だなという気がする。
順調に小さなピークを越え、最低コルに到着する。霧がかなり晴れてきて涸沢岳と西尾根も見えている。目の前にはこれから登る岩稜も見えている。最低コルはそのまま通過し、岩稜を登り始めた時、涸沢岳の方から岩が崩れ落ちる大音響が響き渡り、「落ー」の声が聞こえる。すぐに音のする方を見ると、なんと、オレンジ色の服を着た人が大の字になって落ちていくのが見えた。その後、岩陰に隠れたまま見えなくなったが、しばらく落石の音が続いていた。100m近く落ちただろうか?
あれでは絶対に助からないなと思っていると、Yさんがすぐに携帯電話を出して、警察に電話をしている。素早い行動には感心した。私は、誰か同じパーティーの人がいると思い、大声で、「警察に連絡しろー」と声をかけると、「連絡しています」と返ってきた。
300mくらい先だと思うが、これから向かう先での事故だけに、我々のメンバーも精神的に萎縮し、冷静な判断ができなくなると大変なので、ロープを出して、全員でつなぎ合って登ることにした。しかし、つないだだけでは一人が落ちると全員が落ちてしまう危険があるので、岩角にロープをかけたり、鎖場ではカラビナを鎖にかけて自己確保をしながら歩くように伝えて登っていく。
事故現場に近づくと穂高岳山荘に常駐するレスキュー隊の方がすでに現場に来ていた。「この上の鎖場で落ちたので気をつけてください」といわれる。現場と思われる鎖場をトラバースし、急な岩場を登るようになる。ここを登ると涸沢岳山頂の一角に着く。山頂にもレスキュー隊の人がいて、トランシーバーで頭蓋骨陥没で心肺停止、天気が悪くヘリが飛べないので、遺体収容袋に入れて固定すると言っている。遭難は楽しい登山を一瞬のうちに悲劇にしてしまう。命さえあれば、救助のしがいもあるのだが・・・。
涸沢岳の山頂からは、穂高岳山荘がよく見え、ジャンダルムも見えていた。下り始めると、青空も見られるようになった。小屋では、いつものように楽しい時間を過ごし、他のパーティーの方と話をしていたら、立教大学の卒業生で、N教授を知っている。このことで話が盛り上がり、こちらの紹介もさせてもらった。また、白河山岳会の方ともお会いし、福島県山岳連盟のO会長のことをよくご存じだった。
新しい出会いを楽しみ、早々に眠りについた。
★7月21日 夜半に外に出てみると、満天の星空だった。天の川に沿って白鳥(座)が飛んでいる。
朝になっても素晴らしい天気だった。 小屋の前には日の出を見る人が大勢並んでいる。日の出は常念岳山頂のすぐ上から始まった。予報の悪かった今回の連休で初めてのご来光だろう。
小屋で早々に朝食を済ませ、奥穂への登りにかかる。まだ体の動きがぎこちない中で、急なはしごを登っていく。ここも落ちたら助からない可能性が高い。無事に通過し、緩やかな奥穂への岩の道を登る。槍ヶ岳が涸沢岳と北穂の間に見えてきた。槍ヶ岳の左には立山も見え、右手には白馬岳方面も見えてきた。すぐ右手には笠ヶ岳や抜戸岳が、その右奥には黒部五郎岳が見え、鷲羽岳方面も見えている。素晴らしい展望だ。
奥穂の山頂近くになると、今まで見えていなかったジャンダルムがよく見えるようになる。ロバの耳をトラバース中の人や馬ノ背を下っている人たちも見える。乗鞍岳や御岳、焼岳も見える。山頂に着くと、これから向かう前穂高岳が間近に見え、360度の大展望だ。
朝の出発が30分ほど遅れているので、奥穂の山頂で長居はせず、写真を撮ったあとは吊り尾根に向かう。吊り尾根にも何カ所か危険箇所や鎖場がある。途中の岩場で恐怖におびえてなかなか歩けない女性とサポートしている男性のパーティーがいたが、「ここから先も厳しいところがあるので引き返した方が良いのではないですか」と言おうと思ったが、いらぬお節介かもしれないと思い、何も言わずに通り過ぎた。言うべきだったかなと後ろ髪を引かれる気持ちもあったが、山は自己責任でもあるので、これも仕方がないかなと思う。
我々のパーティーは、Yさんが先頭を歩き、順調に進み、最低コルからトラバースして紀美子平に着いた。ここにザックを置き、前穂を往復する。一カ所悪いところがあるが、順調に登り、山頂に到着。雲が出始めていたが、何とか奥穂も見えた。北尾根の方にも行き、3峰や2峰のピークを見ることができた。
山頂をあとに下山にかかる。片側が切れた岩場も全員、無事に通過。紀美子平で休憩し、重太郎新道を使っての下山にかかる。いきなりの鎖場となるが、見た目ほど傾斜は強くなく、少し鎖につかまる程度で全員そこを通過する。
とにかく急な重太郎新道は樹林帯に入っても鎖場やはしごが続く。疲れが膝に来たIさんが少し転ぶようになってきた。ゆっくり慎重に下るようにする。
岳沢小屋に着き、帰りのバスを予約していたYさんはここから早く下ることにする。標高が下がり直射日光が当たるので、さすがに暑くなってくる。岳沢をあとに、上高地を目指す。傾斜は緩いがここも長い道のりだ。疲れた体を引きずるようにみんな一所懸命に歩いている。
上高地に下り、いつもながらの水草が流れになびく沢のせせらぎを聞いていると、心が安らぐようだ。全員無事に帰ってこれて本当に良かった。リーダーとしての重圧に押しつぶされそうになりながらも、みなさんの協力のおかげで、一人もケガや事故なく帰り着けたことに感謝しています。
記:網干 |
登山知識及び技術向上コース(北穂・前穂縦走)山行報告