登山知識及び技術向上コース(小遠見山)山行報告
実施日 山名 参加者 会員 障害者 0名 健常者 3名
平成29年3月18日~19日 小遠見山 合計 3名 会員外 障害者 0名 健常者 0名
コースタイム:
3/18 地蔵の頭(13:50)…小遠見山(15:50-16:00)…テント場(16:00)
3/19 テント場(8:10)…テレキャビン(10:00)
天気:
3/18 曇り、
3/19 雪後曇り

★3月18日

 今年度2回目となる登山知識及び技術向上コースは、冬の大遠見山とした。小遠見山から中遠見山の間にテントを張り、冬山でのテントを体験し、雪上技術を身につけると共に、最高に美しい鹿島槍ヶ岳北壁のモルゲンロートを見ることを目的とした。しかし、天気予報は全体に良いのだが、日本気象協会の白馬村の天気予報を見ると、土曜の午後から曇りとなり、日曜日の朝は雪の予報になっていた。その予報が外れることを願って、スーパーあずさに乗り込んだ。

 

 あずさの車窓からは、いつもながらのすばらしい風景を堪能できる。大糸線に乗り換えると、北アルプスの山々が迎えてくれる。蝶、常念、大天井、餓鬼岳と続き、蓮華岳、針ノ木岳、北葛岳も見えてくる。そして、運転席から爺ヶ岳や鹿島槍ヶ岳も見えるようになる。

 

 神城駅で電車を降り、歩いてスキー場に行こうとすると、H君がバスがあるという。駅に止まっていたバスは、スキー場への送迎バスだった。これはラッキーだった。予定していた30分のロスタイムを短縮できる。

 

 テレキャビンの往復チケットを購入するが、これもどこで買えば良いのか分かりにくかった。それでもテレキャビンに乗り込んで、ぐんぐん上がっていく。ただ、すでに上空は薄雲が広がって、青空がほとんど見えなくなっていた。

 

 テレキャビンを下り、アルプス第一ペアリフトで地蔵の頭に向かう。Kさんがリフトにワカンを引っかけてしまい、リフトを止めて外してもらっていた。

 

 地蔵の頭に登らなくても良かったが、天気が悪化しているので、早めに写真を撮っておきたかったので、登ってみた。まずは見返り坂を登る。今日、最も傾斜のある登りだった。標高1,750m付近からは小遠見山が見える。尾根の東側には大きな雪庇が張り出している。

 

 1,850m付近まで来ると、五竜岳がよく見えるようになる。隣の唐松岳と麓に向かって緩やかに伸びる八方尾根、その向こうに白馬三山が見えている。青空ならくっきり見えるところだが、曇り空のため、コントラストが弱く、良い写真にはなりそうにない。

 

 ここからは雪庇を踏み抜かないように注意が必要だが、先行者のトレースがしっかり付いているので安心だ。傾斜も緩く快適に登る。小遠見山が近づくと鹿島槍ヶ岳が見えてくる。小遠見山に着くと、鹿島槍北壁がその下の雪渓、カクネ里の上に聳えている。八峰キレットを挟んで五竜岳への稜線もすばらしい。この山々がモルゲンロートに染まる姿を一番の楽しみにして来たが、今回は難しそうだ。

 

 もう16時になるので、小遠見山から少し下りたところにテントを張ることにする。竹ペグに付けたひもは細くなっていて頼りないが、まだ何とか大丈夫だろう。トイレも作ってテントに入る。

 

★3月19日

 昨晩は早々にシュラフに入ったが、テントがばたばたと風にはためく音が強く、よく眠れそうにないので、外に出て、外張りの裾を雪で埋める。それで、大きな音はしなくなったが、それでもばたばた言う音はいつまでも継続している。再度、外に出てみるが外張りの裾は雪に埋まっているので、その音ではないようだ。入口の吹き流しをしっかり締めてシュラフに潜り込む。

 

 しばらくすると、圧迫感を感じるようになる。目を覚ましてみると、テントの壁に雪の線が中間近くまで付いている。吹きだまりになってテントが雪に埋もれかけている。登山靴を履いて外に出て、雪かきをする。テントの生地に触れるところはスコップを使えないため、手で雪をよける。今回、Hさんがスコップを持ってきてくれたので、大助かりだ。スコップがなかったら、テント場の整地や雪かきに多くの時間がかかっていたと思う。

 

 雪かきは、夜半に3回行った。3人で交代で行った。テントの外をのぞくが、真っ白で何も見えない。やはりモルゲンロートは期待できそうにないため、ゆっくり寝ることにする。

 

 朝食を作り、テルモスに入れるお湯を作って、テントの撤収にかかる。山側は真っ白だが、麓側には太陽も顔を出していた。新雪も30cmは積もったようだ。昨日作ったトイレも、ピッケルやワカンも全て雪に埋もれている。それらを掘り起こし、パッキングして下山にかかることにする。

 

 昨日は、つぼ足で登ってきたが、今日はワカンを付ける。ワカンの下に靴のつま先が落ちてしまい、下りはとても歩きにくい。何度も直しながら下っていく。新雪の上に、うさぎの足跡があった。強風にも負けていないようだ。

 

 大遠見山から下ってきた単独の人が先に下っていったが、1,850mのところから北の尾根に入ってしまった。スキー場が見えたので、すぐに間違いに気がついて、先に下った人に伝える。その人も気がついていたようだった。見返り坂の近くに来ると、続々と登ってくる人たちがいた。明日の朝は、快晴なのだろうか?

 

 帰りもとんとん拍子に進んだ。テレキャビンを下りてバスの運行を聞いたら、すぐに駅まで行ってくれるという。とてもラッキーだった。電車もすぐに来た。北アルプスの山々は、まだ雲の中に隠れていた。大糸線の電車に揺られ、いつの間にか3人ともうとうと眠りについていた。

 

                                                                 記:網干

 

《参加者の感想》

 待ちに待った日がきた。五竜岳へ続く尾根、遠見尾根。だいぶ前ゴールデンウィークにいった時と違う。山々は厳しい顔をしているようにみえた。冬のテント泊、一週間前からザックの重さを気にしていた。

 歩き始めてから、息が荒くなっていく。やっぱり重い。鹿島槍や五竜岳が見える小遠見まで90分。時間は短いがその時の流れが一歩一歩おもく感じる。ぶつぶつ考えていてもとにかく登らないとならないので、数を数えながら登ることにした。それがよかったのか、リーダーの話が面白かったのか、あっさり目的地に着いた。

 リーダーは電車の中で天気を気にしていた。能天気なわたしは晴れるものと信じていた。残念ながら、鹿島槍のモルゲンロードは見えなかったが、冬山の怖さを教えてくれた山行だった。厳しく、かつしっかりしたリーダーに感謝したい。冥土の土産にいいよと言われた鹿島槍のモルゲンロード。まだまだ早い、ということかもしれない。

 同じ姿勢でいることが腰に負担になるにもかかわらず、大きなザックを担ぎ、狭いテントの中でお湯をなんども沸かしたり、夜中にゴーゴーと吹雪く外に出て、埋まっていくテントの雪をかき出したり、とおりいっぺんの感謝の言葉で締めくくれない。山の楽しさ、厳しさ、人の弱さ、強さ、いろんなことを教えてくれる山や自然。そしてそこへ導き、身をもってそれを教えてくれるリーダーに敬礼、です。男(リーダー)はつらいよですね。お疲れ様でした。いつか冥土の土産をもらいにまたトライしてみたいです。

                                                              記:S.Kさん