今回は、日曜日が荒れるという予報になったため、大人と子どものふれあい登山で行く予定にしていた赤岳を中止とした。しかし、土曜日は好天に恵まれる可能性が高いため、日帰りで行かれる山を検討してみた。すでに回数券を入手している方もいるので、中央線沿線の山を検討したとき、編笠山が思い浮かんだ。小淵沢から観音平までタクシーで行けば、日帰りは可能だ。翌日は日曜日なので、帰りが遅くなっても大丈夫という思いもあり、編笠山に変更して個人山行を行うこととした。
中央線の車窓から南アルプス方面に雲がかかっているものの甲斐駒ヶ岳がよく見えている。これは、思った通り期待できそうだと感じた。
小淵沢駅からジャンボタクシーで観音平まで上がる予定だったが、富士見平からの方が少し時間が短いので、コースを変更して富士見平で下車する。ここはすばらしい展望だった。南アルプス北部が一望でき、富士山もうっすらだが見えている。カラマツの梢付近にはモズが止っている。足下では、アヤメが咲き、ギンイチモンジセセリやサトキマダラヒカゲが舞っている。今日は暑くなりそうだ。
今回は、Iさんに先頭を依頼して、登山口から歩きはじめる。少し登ると、ギンランがたくさん咲いていた。足下にはシロバナノヘビイチゴも咲いている。レンゲツツジも見られるようになった。サラサドウダンも咲いている。
最初の展望台に着くと、樹林の上から甲斐駒ヶ岳や仙丈岳、北岳が見える。展望台と言っても人工物があるわけではない。自然の作ってくれた展望台だ。
さらに登り、シダの群生地を過ぎると、雲海展望台までもう少し。雲海展望台は、富士山方面の樹林が切れていたが、富士山はすでに見えなくなっていた。周囲にはレンゲツツジが咲き、ミツバツツジも1本だけ花を付けていた。
ミヤマハンショウヅルやキバナノコマノツメの花も見られるようになった。登山道は石のゴツゴツした道となる。カラマツが中心だった林は、原生林の針葉樹に変わってきた。原生林に囲まれた押手川に到着する。少し早いがここで昼食タイムとする。押手川は、昔、登山者が水を求めて苔を手で押したところ、こんこんと冷水が湧き出たことから名付けられたらしい。山中の尾根に、静かに流れる小川があるのは、なんとも言えず不思議な光景だった。
うっそうとした原生林の林をさらに登っていく。ミツバオウレンやコイワカガミが林床を飾っている。木々の背丈が低くなり、標高が上がったことを確かめる。樹林が切れたところから、甲斐駒や仙丈岳がよく見える。まだ雲に隠されていないようだ。
小さな桜はミネザクラだろうか。鉄のハシゴを登ると山頂は近い。登山道の脇にはゴーロ帯も見られた。
樹林が切れて展望がよくなる。金峰山も見えるようになる。いよいよ山頂に到着だ。上空には真っ青な空が広がる。
山頂に着くと、これまで見えなかった八ヶ岳の山々が間近に見えるようになる。すぐ近くの権現岳とその後に赤岳が見える。その左手には中岳、阿弥陀岳と続き、横岳や天狗岳、蓼科山も見える。北の方には諏訪湖も見えている。南アルプスは北岳が雲に隠れ、甲斐駒と仙丈岳が見えている。
去りがたい気持ちのよい山頂だが、今日は日帰りのため、下山にかかる。下りは青年下野経由の予定だ。少し下ると青年小屋が見えるようになる。足下には、これまでになかった白いスミレが咲いている。小さくて目立たないが、ウスバスミレのようだった。
青年小屋の手前は、大きな石が積み重なったゴーロ帯だ。私はこういうところが大好きだが、視覚障害者の人たちにとっては大の苦手な場所。健常者であっても踏み外したら大けがをする可能性があるため、慎重に下る。
青年小屋に着くと、入口に赤提灯がぶら下がっている。明日は休みだ。雨もそれほど降らないような感じがするので、男性陣は誘惑に負けそうになる。しかし、そこをKさんが「帰ります」と制止してくれた。赤提灯に後ろ髪を引かれる思いも感じながら、編笠山の巻き道を下る。
この付近にヒカリゴケがあるはずだが、どこにも見られない。小屋の方に聞けばよかったと思ったが、後の祭りだった。しかし、この巻き道は、うっそうとした原生林で、苔むした林床の所も多い。また、湧き水も何ヶ所か出ているところがあり、豊かな自然を感じた。コイワカガミもたくさん咲いていた。
ようやく押手川に到着し、ここからは登ってきた道を下ることになる。雲海展望台からは、観音平に下るコースを行く。タクシーに観音平に付きそうな時間を連絡する。次第に登山道は平坦になり、観音平に到着した。観音平にもヒカリゴケがあるので、見に行く。しかし、ヒカリゴケの数が少なく、ちょっとがっかりだった。
迎えに来てくれたジャンボタクシーに乗り込み、小淵沢駅に向かう。ほぼ予定通りの時間に下山することができた。好天に恵まれて、八ヶ岳の南端の山を楽しむことができました。
記:網干 |