今日はすばらしい天気に恵まれた。昨日も晴れたので、一昨日に降った雨も乾き、岩場はフリクションが効いて、快適に登れるのではないかと思われる。
今回は二人だけの参加になってしまったため、タクシーでは費用負担が重くなりすぎるため、自己責任でレンタカーで行くこととした。
登山口に近づくと、二子山の岩峰が間近に見えるようになる。切り立った岩壁が正面に見え、すばらしい景観だ。気を引き締めていきたい。
登山口近くに車を止める。すでに何台も止っていた。車道に沿って少し歩くが、地図ではこんなに車道を歩くようになっていなかったと思い、スマホの地図で確認すると、登山道を大きく外れて、反対側に行く車道を歩いてしまっていた。すぐに引き返し、登山道を見つけて登っていく。
登山道は、沢に沿って付けられている。滑りやすい箇所にはロープが付けられていた。雑木の林は、色づき始めていた。柔らかな色合いがとてもきれいだ。
登るにつれて、鮮やかに色づいた木々が現れるようになる。Mさんも私も、今年の秋で、一番きれいに色づいていると意見が一致する。真っ赤に色づいた木々が次々に現れる。今回の山行でも、この付近が最も色づいていた。
そこから少し登ると股峠に到着する。紅葉した木々の間に西岳が少し見えている。すごい岩峰のようだ。
まずは、東岳へと向かう。急斜面を登り、やや左寄りに行くと、ヤマレコで確認していた鎖場が現れる。やや外側に振られそうになるので、慎重に登る。その上も、ロープが張られていた。久しぶりの急な岩場なので、少し怖く感じる。
そこを登り切ると視界が開けてきて、西岳の岩峰が目の前に見える。さらに登ると、東岳山頂の見えるところに出る。岩稜を歩いている人たちが見える。西岳は、近寄りがたい要塞のように堂々と聳えている。南側には両神山が見え、そこから右手側には赤岩岳方面へのギザギザの岩稜が続いている。両神山の左奥に見えていたなだらかな山容の山は、雲取山ではないかと思われた。
少し登っていくと、「網干さん」という声がする。二人の人をロープで確保しながら歩いていたプロガイドのKさんだ。3年ぶりくらいの再会になる。Kさんは仕事中なので、手短に挨拶して別れる。
東岳の南側もすっぱり切れ落ちている。ふらついたりしないように慎重に歩く。東岳山頂に到着し、少し早い昼食タイムとする。女性二人が登ってきた。バスの話をしていたので、三峰口からバスを乗り継いできたようだ。ほとんど休憩せずに下っていった。この二人がスーパーウーマンとはその時は気づかなかったが、西岳で再会してから、この二人のすごさが分かった。
休憩後、展望台まで行ってみることとする。切れ落ちた右側に注意して歩く。展望台はさすがに展望がよい。近くの白石山とその奥に武甲山が見える。左手には父不見山(ててめえじやま)も見えている。他の山はよく分からなかった。
展望台にいると、男性から声がかかった。展望台にもう一人立つことが出来ますかとのこと。当然できるので、来てもらう。せっかくなので写真撮影のお手伝いをMさんがしてくれる。話を聞いていると、東岳の登りで、とても下れないような岩場を登ってきたらしい。下るルートが分かるか心配なので、一緒に下ってほしいとのこと。問題ないので、一緒に下る。彼の話は、とても楽しく、Mさんと山仲間アルプに入ってくれたら、人気者になるねと話していた。
彼は、下から見ると、鎖場の手前にある凹角を登ってきたらしい。これは3級以上のグレードがありそうな岩場だ。まだ登山を始めて3年とのことだが、登り技術はかなりありそうだ。
股峠に到着し、ハーネスを付ける。ここで、単独行の彼と別れて、西岳に向かう。
登山道を歩いていると、一般コースを行ってしまいそうだったので、途中にあった踏み跡をトラバースしていく。すると、ヤマレコにたくさん写真が掲載されていた「上級者コース」の看板があった。取り付きから上を見ると、ホールド、スタンスはたくさんありそうだが、慎重を期してロープを付ける。そして、私がトップで登り始める。
立木で確保し、Mさんに登ってもらう。問題なくすぐに登ってくる。さらにもうワンピッチ登る。ホールド、スタンスが豊富で、楽しく登れる。Mさんも順調だ。もうワンピッチ登ると、傾斜が落ち、岩場も少なくなり、ほぼ終了点と思われた。そんな時、上から女性二人が下りてきた。東岳で出会った二人だった。間違って一般コースを上ってしまい、ここに来た意味がないので、上級コースを下っていくとのこと。ここを下るとは、強者だと感心する。
少し登ると、最初のピークに到着する。少し先に山頂標識のあるピークが見える。今いるところが1峰、標識のあるところが2峰のようだ。岩壁の方からはクライマーも登ってきた。ここからの稜線も両側が切れ落ちて面白そうだ。
山頂標識のある2峰で休憩する。ここにも別の二人の女性がいたので、Mさんと二人での写真を撮っていただく。遠くを見ると、山々のさらに向こうに見える山がある。きっと南アルプスではないかと思われた。
2峰から先の稜線もとても楽しいコースだ。しかし、左側はすっぱり切れ落ちている。右側も急角度で切れ落ちている。痩せた岩稜を慎重に歩いて行く。岩稜を右に左にと岩を越えながら歩いて行く。少し行って振り返ると、さっき上級コースを下っていったスーパーウーマンの二人が後にいるではないか。上級コースを下って、また登り返してきたとのこと。間違いなくスーパーウーマンだ。
振り返ると、2峰から切れ落ちた岩壁がすごい迫力で迫っている。スーパーウーマンの二人にも、「後がすごいよ」と教えてあげる。
しばらく岩稜を歩き、3峰と思われるところを通過する。そして魚尾道峠への下りにある鎖場の付いた急な岩場を下る。さらに少し行くと、東岳で会ったガイドのKさんたちに再会した。少しハングした岩の所で、休憩していた。私たちはそのまま下っていくことにする。
峠と思われるところで、鹿除けの網が張られたところに、道がよく分からないという単独の男性が待っていた。扉のようになっていないので、網を越えてよいのか迷ったらしい。赤テープは網の向こうに付けられているので、よく網を観察したら、1本のひもで網を編むようにして固定されていた。そのひもを途中まで外して網の向こう側に出る。
あとは、安全な山道歩き。樹林の切れたところから二子山の西岳と東岳がよく見える。岩質は全く違うが、錫杖岳前衛フェースを思い出させてくれる屏風のような岩の壁だ。
樹林帯は、午後の斜光線が差し込み、紅葉と相まってとてもきれいだ。ススキは、逆光を受けて輝いている。背景の両神山とのコントラストが美しい。
予定時間より30分ほど早く車道に飛び出した。後からスーパーウーマンのグループが追いついてきて、写真を撮ってほしいとのことなので、二子山を入れて撮る。「あとはビールでしょ」という二人は、とても楽しそうだ。バスの時間までまだ1時間くらいあるとのことなので、Mさんの運転するレンタカーに乗ってもらうことにする。
二人は、やはりスーパーウーマンだった。トレランをする一人は、転倒して腕を骨折しても走り通したり、清里から赤岳に登り、権現岳、編笠山を縦走し、小淵沢まで日帰りで行ってきたこともあるとのこと。尾瀬の長蔵小屋から15kgのザックを背負って2時間半で燧ヶ岳を往復し、小屋の人から働かないかとスカウトされたりしたとのこと。もう一人の女性も、冬の権現岳から赤岳に縦走しているらしい。二人とも超人だ。
そんな楽しい話しをしながら、二人を西武秩父駅で降ろし、私とMさんはレンタカーを返しに長瀞駅に向かう。
すばらしい岩稜、美しい紅葉、懐かしい人との出会い、一期一会かも知れないけど、とても楽しい人たちとの出会い、そんな思い出多い山行となりました。
記:網干 |