★6月30日
新幹線を福島駅で下車する。福島市は好天に恵まれとても暑かったが、吾妻連峰方面は稜線部分を雲が覆っていた。今日は展望がないかなと思われた。
バスは、土湯温泉を経由して安達太良山方面からスカイラインに入る。バスの車窓から吾妻連峰方面が見え、土湯峠に着くと磐梯山も見えてきた。雲が比較的多かったが、展望はよく、山頂からの展望に期待が持てると思った。
浄土平手前の鳥子平でバスを降りる。バスを降りたところが登山口。準備をしてすぐに出発する。2日ほど前の雨のせいで、登山道はぬかるんでいるところが多い。大きな石の多い道でもあり、滑りやすいので注意して登る。サラサドウダンやベニサラサドウダンが見られるようになる。傾斜が緩くなると景場平に着く。木道に座って昼食タイムとする。湿原には多くのワタスゲが風に揺れている。その向こうにこれから登る東吾妻山が見えている。
昼食後、木道を進んでいくと、池が現れた。池の畔にもワタスゲやウラジロヨウラクが咲いている。木道の脇には、モウセンゴケが多く、ミヤマリンドウやイワナシも咲いている。また、コバイケイソウも咲いていた。今年は当たり年になるのだろうか?
東吾妻山への登りは、次第にクマザサが増え、藪漕ぎをするところも出てくる。クマザサをかき分けるように登っていく。とにかく虫が多く、無視できない。みんなの頭の周りを無数の虫がぶんぶん飛び交っている。こんな所は少しでも早く抜けたいが、そうもいかず、手で虫を払いのける程度しかできない。
それでも、ようやく展望台付近に出た。完全に雲に包まれ、雷も鳴ってきたので、展望台は寄らず、そのまま山頂に向かう。雷は次第に近づいているように感じた。東吾妻山の山頂は、雲に包まれて展望がなかった。雨の神が元気づいたようで雨も降り始め、雷も鳴っているので、集合写真だけ撮って、早々に下山にかかる。
下るにつれて雨も止み、霧も晴れてきて明日登る一切経山方面も少し見えてきた。雷様も少しおとなしくなってきたようだ。姥ヶ原に着くと、東吾妻山も見えるようになってきた。ハクサンシャクナゲやマルバシモツケも咲いている。チングルマやコイワカガミも咲いている。
少し遠回りだが、鎌沼の縁を通って浄土平に向かうことにする。かわいいアカモノの花やツマトリソウを楽しみながら浄土平に着く。今日、石巻を出発して吾妻小屋に来るGさんにショートメールを送り、こちらは17時頃小屋に着きそうであることを伝える。一番短いコースで吾妻小屋に向かう予定だが、ワタスゲの群落が見えたので、そこまで行ってみることにする。湿原にワタスゲの群落が広がり、すばらしい場所だった。
車道に出て、鎌沼をぐるっと回るコースを歩き、吾妻小屋を目指す。ここは完全な山道だった。雨も降り始めてきた。ようやく右手に吾妻小屋が見えるようになり、ホッとする。小屋に着くと、すぐにGさんが出てきた。Gさんたちも今着いたところらしい。久しぶりの再会を喜び合う。今回は、Gさんの息子さんと友だちも参加だ。若い二人は、やっぱりうらやましい。
早速、ビールでのどを潤し、夕食となる。21時が消灯で、それ以降はランプが二つつくだけになるとのこと。今回は、我々だけの貸し切り状態だった。恒例の歌を歌い、若い二人には聞いたこともない歌ばかりだったが、付き合ってもらった。
★7月1日
今朝は快晴で明けた。一人で車道付近まで散歩に行くというFさんと、Fさんを探しに行ったNさんがなかなか帰ってこない。もうすぐ朝食の時間なので、車道方面に探しに行く。ようやく二人が帰ってきた。Fさんは、両目のまぶたをブヨと思われる虫に刺されてしまったようで、お岩さん状態だ。目を開けられず、さらによく見えない状態らしい。
朝食を摂り、1時間ほど遅れて、吾妻小屋を出発する。まだ体調が万全でないGさんは、山には行かず、一人で高湯温泉に来るまで行って待っていてくれる予定だ。Gさんと別れて、出発する。
浄土平では、Iさんの計らいで再度、ワタスゲの群生地に立ち寄る。今日は、朝日が降り注ぎ、とても明るい。逆光ではあるが、吾妻小富士もよく見える。
木道を歩き、さらに登山道を登って酸ヶ平に向かう。足下にはハクサンチドリも咲いていた。ハクサンシャクナゲもきれいに咲いている。階段を登っていくと、酸ヶ平に到着する。池塘には谷地坊主も見られた。
少し休憩した後は、登山道を登り、酸ヶ平避難小屋でトイレタイムとする。避難小屋は広いが、木の床が少なく、地面には少し暑いベニアを敷くのだろうか?
さらに一切経山を目指して登っていく。ミネザクラが咲いている。振り返ると、酸ヶ平と鎌沼が見え、昨日登った東吾妻山もよく見える。登るにつれて、安達太良山方面も見えるようにる。磐梯山は残念ながら雲がかかって山頂が見えない。その右手には、残雪の多い上越の山が見えていた。越後三山方面ではないかと思われる。
コマクサが咲いていても不思議でないようなザレ場を緩やかに登る。一切経山の山頂が見えてきた。山頂に着くと、西吾妻山方面がよく見えるようになる。吾妻連峰はとても緩やかな山頂が多く、ピークがはっきりしない。だが、ガレ場等が多く、苦労するところもある。
山頂からは、五色沼がよく見える。ほとんどの登山者が五色沼が見える斜面で休憩している。太陽が雲に隠れていたので、沼の色合いが今ひとつのように感じたが、青空を映したら、きっと真っ青な沼になるのだろうと思う。
山頂で休憩した後は、五色沼方面に下る。五色沼はすぐ近くに見えたが、意外に時間がかかった。それでも五色沼の横を通り、家形山への分岐に向かって登っていく。この付近からは、青空を移した青い五色沼とちょっとはげ頭のような一切経山がよく見えた。この景色ももう見納めだ。樹林帯へと下っていく。
追分を過ぎ、慶応吾妻山荘への分岐で昼食タイムとする。20年ほど前に慶応吾妻山荘に泊まったことがあるので、寄り道してみたかったが、時間がかなりオーバーしているので、早めに下山を開始する。このままだと高湯温泉に入る時間がなくなりそうであり、それどころかバスに間に合わない可能性もあるので、車で高湯温泉に行っているGさんに不動沢まで迎えに来てもらえないか電話するが出ないので、ショートメールを送ってみた。
しばらくして電話がつながったので、来てもらえることになった。ところどころ歩きにくい箇所もあるが、昨日よりはずっと歩きやすい。全員が車に乗れないので、4人が先行して下っていく。
不動沢に着いてもGさんの車が見えなかったが、息子のKさんが探してきてくれた。Kさんからバスで帰るメンバーを優先して送っていただく。Nさんは2便目となる。入浴できる時間が短くなり、申し訳ないが先に行かせていただく。
高湯温泉の公衆温泉に入っていると、女湯からFさんの声と共にNさんらしい声も聞こえた。吾妻山荘の親父さんが駐車場で見つけていただいて、乗せてきていただいたらしい。親父さんに感謝です。
久しぶりに会えたGさんや息子さん、その友だちと別れを惜しみ、私たちは福島駅行きのバスに乗り込んだ。麓に下りて、吾妻連峰を振り返ると、すでに雲に包まれていた。
記:網干 |