今回、リーダーとしてこの山行に参加することになった。これまで代役として務めることはあったが、初めからリーダーとして行うのは今回が初仕事。いつもは気楽に参加しているが、今回は緊張しながら当日を迎えた。
朝から快晴の素晴らしい天気。家を出るころは若干の寒さを感じたが、武蔵五日市駅に着くころには軽く汗ばむ陽気。アルプ屈指の雨男で通っている私だが、ここ最近は晴れることも多く、もう雨男は卒業でいいかな。上養沢行きのバス乗り場は非常に大勢の人が並んでいた。臨時バスも出て、運良く私たちのところで途切れてたので座っていくことができた。幸先の良いスタートだ。大勢の人が乗っていたバスも大半は途中の秋川渓谷に訪れる人で、上養沢に着くころには私たちだけとなった。バスを降りるとひんやりした空気で心地よい。
いつものように声出しの自己紹介。今回参加いただいたSさんと初めての方や、久しぶりに顔を合わせる方もいて和やかな雰囲気。私もSさんとは役員会で顔なじみだが、山を一緒に登るのは初めて。Fさんからサポートロープについて指南。基本はザックを触り、大きく動いた時にロープを頼りにするので、ロープは適度にたるませた状態が良いとの事。ついピーンと張りがちだが、実際にそれを頼りにしている人の意見を聞くことができてとても参考になった。
小さな川沿いの車道をゆるやかに登っていく。川にはヤマメも泳いでいた。釣り好きのSさんはいいところだなぁとしきりに呟いている。20分ほど進むと柿平園地と呼ばれる登山口に到着。ここから山頂まではトイレはないため小休止。子供が描いたと思われる熊注意の看板があった。なんとなく心が和むイラスト。
ここで調べてきた日の出山の由来を披露。日の出山は奥多摩の入口になるところで関東平野を望むことができ、日の出が良く見えることからついた日の出町にあるから日の出。また信仰の山である隣の御嶽山から見て日の出となる方角でもあることから、このような名前になったという話もある。
身支度を整えて山道に入る。いきなり石の階段が始まる。うっそうとした杉林の中をゆっくりではあるが、ぐんぐんと高度を稼いでいく。30分ほど登り、養沢鍾乳洞に到着。既に廃墟になっていて今は見ることもできない。数年前にここに来たことがあるSKさんが、以前は建物があったと言っていたが、今は跡形もなく完全に朽ちてしまっていた。
10分ほど休み出発。相変わらず景色に変化はなく、うっそうとした森の中を石や木でできた階段を登っていく。日の出山へのルートは御嶽山から縦走する方がメジャーで、今回の私たちのルートはマイナーである。一人だけ地元の管理しているような方とすれ違っただけで他の人と出会わない。ひたすら石の階段が続くが、周りには岩場や石垣のようなものも出てきた。Mちゃんの息も荒いが、頑張ってついてくる。ゆっくりと深呼吸をしながら行こうと声を掛けた。
ようやく登り切ったところで景色の開けたところに出た。金毘羅尾根だ。東京都心部の景観が開けている。澄み切った青空と緑の山々、遠くの街並みとのコントラストが眩しい。ここから、クロモ岩まで、関東平野を見ながら進む。既に昼の時間にもなっており、山頂まではもう一息ではあるが、都合良くベンチもあり、山頂は混雑していることも予想されることからここで昼食とする。Nさんがうっかりお弁当を忘れてしまったようだ。だが、皆からのおすそ分けで十分なエネルギー補給ができた様子。こういうチームワークがアルプの良いところだと思う。
山頂からこのクロモ岩、つるつる温泉の道はメジャーなルートで通る人も多い。子供たちがヤッホーと大声で叫びながら私たちの前を通り過ぎる。昼食を済ませて山頂を目指す。この辺りは地図で見ると分岐が錯綜していて迷わないか心配されたが、しっかりとした道標も整備され特に迷うことなく進むことができた。
山頂へ直登する階段と巻きながら進む分岐があった。巻きながら進む方を選択。後方から私を呼ぶ声がした。白い可憐な花が咲いている。写真に収めるが花の名前が分からない。A会長の宿題にしようとするが、そういえば以前もリーダ代行をした時に同じ会話をした記憶がある。相変わらず進歩がありません。会長、ごめんなさい。
ほどなく進むと東雲山荘の建物が見えてきた。今日は閉まっていたが、素泊まり3千円で泊まれるようだ。トイレを済ませて山頂へ。金毘羅尾根よりも更に関東平野が開けている。昼も廻っているためか、思ったほどは混雑していない。朝のバスの様子だとつるつる温泉は入場規制が掛かっているだろうということで、少しのんびり休憩することにした。ほんの僅かだが、富士山の山頂の片側を見ることができた。皆で方位盤を囲みながら、そこに書かれた山々について、此処も行ったね、あそこは良かったね等、ブラインドの方に触ってもらいながら会話している。私はまだ登った山が少ないので横でフンフンと聞いていた。いつか自分だって登ってやるぞと心の中で密かに思った。
関東平野を眺めながら行動食の菓子を食べ、下山にかかる。昼食をとったクロモ岩を通過し杉木立に囲まれた、しっかり整備された道を進む。Mちゃんは少し下りが苦手であるが、Nさんが何も言わずともしっかりとサポートに付いてくれる。本当に頼もしい。Sさんも楽しい会話で皆を弾ませてくれる(Sさんの恥ずかしい話なので残念ながらここには書けません)。
景色が開けたところで休憩。大きな岩があったので、ここが、ヤマトタケルノミコトが蝦夷征伐の帰路の際に顎を掛けて関東平野を眺めたと言われる顎掛岩と思ったが、それはもう少し先だった。顎掛岩には小さな祠と説明の看板があった。それほど大きな岩でもなく顎を掛けるにはちょっと小さい。周りも木々に囲まれ何も見えないが、大昔は開けていたのかもしれない。
ジグザグの道を下っていく。まだ15時ころだが、日は既に山頂の反対側にあるのでやや薄暗い。川のせせらぎが聞こえてきたことろで車道に出る。ここが滝本。今回は顎掛岩を通る山道を進んだが、ハイキングコース新道と呼ばれる舗装林道がクロモ岩の近くまで通じている。エスケープルートとして考えていたが、それを利用せずに予定通りのルートで歩けた。
ここからつるつる温泉まで車道を歩き、途中、機関車バス青春号に抜かれた。これはトレーラを改造した路線バス。急げば乗れるかもしれないとつるつる温泉まで早足で行ったが、とても混雑していたので諦めた。のんびりと来たつもりではあったが、予定の20分遅れでつるつる温泉に着いた。皆の頑張りに感謝!
温泉は入場規制は掛かっていなかったが、帰りの拝島で一杯やろうという案が出て、そうなると温泉どころではありません。早速次のバスで帰ることにした。結果、予定よりも早いスケジュールとなった。
拝島まではみな同じだが、ここでバラバラの方角になるので一杯行く人とそのまま帰る人に分かれ解散した。駅から夕焼けに映える富士山のシルエットが見えた。今日の皆の頑張りのご褒美かな。拙いリーダーではありましたが、ご参加いただいた皆様どうもありがとうございました。
記:井上 |