★8月23日
今回は、ぜひ槍ヶ岳に登りたいという弱視のFさん夫妻に頼まれて実施することにした。しかし、山仲間アルプではサポートできる人が少ないため、六つ星山の会にも応援を依頼してもらった。
天気予報はあまり良くなく、Kさん親子はキャンセルすることになった。しかし、出発直前になると予報が良い方向に変わってきた。ただ、23日の朝までは激しい雨になる可能性がある。あまり強い雨が降ると上高地へのゲートが閉められる可能性があるので、少し心配していた。
心配は杞憂に終わり、予定通り5時半頃、上高地に到着。しかし、着いてすぐ、雨風ともに強い暴風雨となる。今日は槍沢ロッジまでなので、数時間待つことも可能だが、スマホで雲の動きを確認すると6時50分頃にはほぼ雨が上がる予定だ。
朝食を摂ったり、トイレを済ませたりして待っていると、予報通り6時50分頃には雨が上がってきた。7時過ぎに上高地を出発する。
いつもの林道を歩いていると少し日が差すときもあった。しかし、横尾を出発するとき、また少し雨がぱらついた。それ以降、雨は降らなかった。横尾を出発しようとしたとき、Aさんが追いついてきた。Aさんは、今日はババ平にテント泊する。ハイペースで歩いてきたようだ。横尾で昼食を摂ってから出発するとのこと。我々は先に出発する。
一ノ俣の手前にある槍見河原から、槍ヶ岳を見ることができた。一ノ俣で休憩していると、Aさんが追いついた。さすが歩くペースが早い。
ここからは、4人で歩くことになる。
槍沢ロッジで、Aさんと一緒にビールやコーヒーなどを飲んだ後、Aさんは一人でテント場に向かった。私たちは槍沢ロッジでくつろぎ、早々に床についた。
★8月24日
朝、起きるとすばらしい天気だ。今日は長時間の行動になるので、朝食は弁当にしてもらった。ロッジで弁当を食べてから出発する。
馬場平に着くと、出発準備をしたAさんが待っていてくれた。トイレ等を済ませていると、登ってきた女性を見て、Iさんがテレビで見たガイドさんだという。一緒に写真を撮りたいと話したらこころよく受けてくださった。後で確認したら小林ガイドだそうだ。素敵な笑顔で軽やかに登っていった。
早朝ということもあるが、日陰の気温はかなり低い。槍沢ロッジでは、12℃だった。半袖ではいられないので、長袖のシャツを着る。
大曲を過ぎると槍沢のモレーンなどがよく見えるが、稜線は雲に隠れているようだ。登っていくと、ようやく日が当たるようになった。しかし、雲も多く、太陽は姿を見せたり隠れたりしている。
この登りは、高山植物が増えてくる。キオンやミヤマトリカブト、サラシナショウマ、アザミの仲間が多い。モレーンの上に上がって登っていくと槍ヶ岳が見えるようになった。殺生ヒュッテも見える。
ヒュッテ大槍への分岐を過ぎて登っていくと殺生ヒュッテに到着する。予定より大幅に早く到着してしまった。ここで名古屋登稜会のMさんと合流する予定だったが、早すぎて会えなかった。小屋の方にMさんがここに来るので、先に行ったことを連絡していただくようお願いして出発する。
槍の穂先への登りに備えてハーネスを付けて行く。登山道脇には、イワギキョウなどが咲いているが、マクロレンズを殺生ヒュッテに置いてきたので、花の写真は撮れなかった。
槍ヶ岳山荘に到着するが、周囲を探してもMさんは見当たらない。今回、中学生のM君が参加しなくなったので、Fさん夫妻のサポートは私を含めた3人でも大丈夫だと判断し、山頂に向けてロープでつなぎあって出発する。
混雑するときは、槍ヶ岳山荘前まで人が並び、山頂まで3時間以上かかることもあるとのことだが、今回は全く順番待ちはなし。天気予報が良くなかったため、キャンセルした人が多かったのだろう。山は行ってみなければ分からないので、現地で判断することが良いのだが、山行を取りやめた人が多かったことで、私たちはスムーズに登ることができた。
槍の穂先は登りルートと下りルートが分けられている。登りは、途中から千丈沢側を登るようになる。ここからは間近に小槍も見える。ロープで確保しつつ順調に登っていく。一番の難所となる杭が打ってあるスラブ状の岩場も、Fさん夫妻は順調に登ってくる。そして、長い梯子を登り、さらに山頂に通じるさらに長い梯子を登り、念願の山頂に到着する。
雲が多く、黒部五郎岳や薬師岳方面、それに穂高方面は見えなかったが、常念岳、大天井岳、燕岳の表銀座方面はよく見えた。山頂の祠の所に行き、集合写真を撮る。ここも空いていて順番待ちはない。あまり気遣う必要もなく、全員での写真も撮っていただくことができた。
下りは登り以上に危険なので、慎重に下っていく。AさんとIさんの適切な指示のおかげで、順調に下っていく。登りとは違う下りルートだ。最後の頃にトラバース気味に下る鎖場があるので、そこが要注意の所。そこもお二人の適切な指示のおかげで、順調に下り、全員無事に槍ヶ岳山荘に到着する。
もしかしてMさんが来ているのではないかと周囲や小屋の中を見たが、見当たらない。Fさん夫妻は、槍ヶ岳山荘でTシャツなどの記念グッズを買っている。
殺生ヒュッテに戻るが、ひげを生やしたMさんは来ていないという。でも、こんばんは、殺生ヒュッテに泊まると聞いていたので、会えることを期待して待つことにする。
登頂のお祝いをした後、Aさんは、ババ平に下っていった。小屋の方に殺生ヒュッテの名前の由来を聞く。昔、この付近は狩猟する動物たちを追い込んできて、仕留める場所だったことから殺生平と言われ、猟師さんが小屋を作ったことから、殺生ヒュッテの名前になったとのこと。聞いて納得する。
しかし、この小屋は閑散としている。泊まった人は全員でも19人ほど。人が少なすぎて、2階の温度は、明け方6℃しかなかった。小屋は古く、トイレも和式のポッチャントイレのみ。設備では槍ヶ岳山荘の方が遙かによい。
★8月25日
今日は下山するだけなので、小屋の朝食を食べてから下山を開始する。
槍ヶ岳の山頂方面は雲に包まれていた。それでも少し下ると日が差し始める。私は写真を撮りながら下りたいので、途中で先頭をIさんに代わっていただく。
高山植物や蝶などの写真を撮りながら下っていく。一ノ俣を過ぎ、横尾で昼食タイムとする。風呂に入る時間を確保したいので、ここから少し急ぐ。急いだおかげで徳沢まで45分ほどで到着。ここからは少しペースを落とすことにする。
徳沢のトイレから出ると、アサギマダラが飛んできたので、指を差し出すと静かに止った。その後飛び立ったが、周囲をうろうろし、またこちらに来て、今度は交換レンズのケースに止る。逃げないので、そのまま歩き出す。
梓川沿いに来ると強い風が吹いているが、アサギマダラは風に飛ばされないように、レンズケースにしっかり掴まっている。そして、そのまま掴まり続ける。
途中でサルの親子がいたので写真を撮るが、アサギマダラが逃げないように気を遣いながら慎重に右手だけで撮った。
アサギマダラはとうとう明神まで一緒に来た。休憩している時、手を差し出すと手の方に移ってきた。そして羽根を開いてくれた。歩きはじめて、子どもがいたので、アサギマダラを見せてあげる。子どもたちは驚いていたが、その時、アサギマダラはひらひらと飛び立った。1時間ほど、一緒の時間を過ごしたアサギマダラとお別れになってしまった。
あとは、小梨平の風呂を目指して一直線。3日間の汗を流してさっぱりし、乾杯した後、バス停に向かう。予定通りのバスに乗り込むことができた。帰りのあずさは、事前に指定席を取っていたので、全員座って帰ることができた。
無事に鑓ヶ岳に登頂できてF夫妻もうれしそうだった。3日間、お疲れさまでした。
記:網干 |