今回のコースは、これまでの登山知識及び技術向上コースの中でも、技術的にかなり厳しいコースとなる。垂直に近い岩場に付けられた鎖を頼りに上り下りするが、鎖を頼りすぎると腕力を使い切ってしまう可能性もある。男性ならまだ大丈夫と思うが、女性は腕力が弱く、腕力だけを頼りにすると力尽きて転落してしまう危険もある。そのため、ヘルメットとハーネスはもちろん、ロープもクライミング用の45mを持参することにした。
暗くなる前に下山しなければならないため、新幹線を使って現地まで行く。松井田から予約したタクシーに乗り込み、石門入口まで行く。ここでハーネスを付けて出発する。少人数のため、とてもスピーディーだ。
第一石門をくぐり、第二石門に向かう。かにの横ばい、たてばりと鎖場を登り、長い鎖場を下る。第三石門への分岐をそのまま通り過ぎ、第四石門のある広場に着く。今回は稜線を行くため、門はくぐらず反対側に行く。
ここから先は、一般登山者は行ってはいけないとしっかりと標識に書かれている。少し行くと滑りやすい岩場のトラバースとなる。今日は濡れているため、早速ロープを使って通過する。さらに登っていくと、主稜のコル直下の鎖場に付く。濡れていて滑りやすいが、スタンスは大きいため、ロープを出さなかったが、登ってから慎重を期してロープを使って登ってもらう。
主稜のコルで休憩する。金洞山(なんと読むのでしょうか?)方面は、ロープが張られて登山禁止となっている。休憩していると、私たちの後から登ってきた若いペアーが通り過ぎていく。私たちが登り始めると、上で悲鳴のような声が聞こえる。少し登ると、彼らが展望の良いところにいるのが分かる。切れ落ちた岩場にビックリして叫んでいたのだろう?
ロープの張られた岩場を登って行くと、これから向かう中之岳の鎖場が見える。要塞のように立ちはだかる垂直の岩場に、ロープがまっすぐ張られている。うーん、すごいコースだ。
鎖場の下まで登り、ロープをつなぎあって網干がトップで登っていく。鎖を固定する支点のすぐ上の鎖にランニングビレーを取って登る。そこをNさん、Kさんの順番に登る。少し登ると、さっきの二人が切れ落ちた岩場の上にいるのが見える。金洞山もよく見えるようになる。
急な鎖場をみんな無事に通過する。登り着いたところが中之岳だった。展望がよく、裏妙義もよく見えるが、とても狭くて休憩する気にはならない。周囲の写真だけ撮って、すぐに下る。
次は、痩せ尾根の岩場となる。ここでもロープを使用し、Kさんから先に下ってもらう。痩せ尾根の先で、左側の垂直の岩場を下る。3mほどだが垂直のため、ロープがあった方が安心だ。その先は、こけしのような丸い岩が乗った岩場となる。
そこも慎重に通過し、次は東岳への登りとなる。ここも急な鎖場のため、ロープを使って登っていく。登り着くと、通過してきた中之岳がよく見える。
東岳の山頂もあまり広くはないので、そのまま下っていく。しばらく歩いて行くと、ルンゼ内2段25mの岩場が見えるようになる。ここはこのルートの中でも上級と言われているところ。取り付き点に行ってみると、途中が垂直に見える。相当腕力を使いそうだ。この取り付き点は比較的広かったので、ここで昼食タイムとする。主稜のコルからここまで全く休憩なしだった。後ろから来ていた若者二人は、休憩せずに登っていった。女性はまだ登山の経験はほとんどないが、富岡に住んでいるので、来てみたとのこと。急な鎖場をすいすい登っていった。
ルンゼ内2段25mの岩場は、私がトップで登るが、ここだけはNさんにビデオ撮影してもらうことにする。腕力を使って下部の垂直の岩場を登り、ルンゼ内の両側の壁を使って登っていく。上部で左にトラバースしてピークに着く。ピークには2人の男性がいた。妙義神社から来たが、もう腕力の限界のため、東岳と中之岳の途中から下るエスケープルートで下山するとのこと。Nさんが慎重に登ってくる。Kさんは軽やかに登ってくる。
ピークにいると、さらに2パーティーほどが登ってきた。鷹戻しがどうだったかNさんが聞くと、「しびれました」とのこと。私たちは懸垂下降で下る予定だ。
どこが鷹戻しのピークか分からないまま、ルートを探しながら歩いて行くと、ヤマレコで見た鎖トラバースがあった。ここから、いよいよ鷹戻しが始まる。トラバースは、濡れていて非常に悪いので、ここからロープを使用する。下の方で、声がしたので、先に登ってくださいと伝える。60代後半の男性が単独で登ってきた。ここは40数年ぶりに来たとのこと。
慎重にトラバースし、下降点に2人とも来てもらう。下を見ると、足場はかなりありそうだが、予定通り懸垂下降する。懸垂下降は順調だ。途中でピッチを切り、さらに懸垂で下って行く。少しトラバースすると梯子がある。ロープをつないでいるので、そのまま下ってもらう。下の岩場もそのまま下ろうと思ったが、ほぼ垂直なので懸垂で下りたいとのことなので、懸垂下降で下る。
全員無事に鷹戻しを通過できた。時間的にかなり遅れているので、堀切まで行ってそこから中間道にエスケープすることにする。
鷹戻しを過ぎた後も、濡れた15メートルの鎖トラバースや8mの外傾バンドの鎖場があったが、順調に通過する。
そして、ようやく堀切に到着。集合写真を取れる場所がなかったので、ここで撮る。ここからは、中間道へ下っていく。さらに中間道を1時間半ほど歩いて妙義神社に着いた。この道も、昨年崩れた箇所があり、立派な金属の階段が設置されていた。全員無事に降りれてホッとする。ビールで乾杯し、タクシーを待つ。すでに足は疲れ切っていた。2日ほど、足と上腕の筋肉痛が続いていた。こんなに腕力を使った山行は、数十年記憶にないと思います。
記:網干
《参加者の感想》
本格的な岩山に初めて挑戦。ギザギザの峰々を上り下りするルートで少し不安を感じながら、登りました。途中、急斜面は鎖場があるのですが、鷹戻しの下りは腕力では下れないので、ロープで懸垂下降しました。また、濡れている斜面もあるので、安全にロープで確保しながら移動しました。今回は普段使わないロープの使い方や確保の仕方など色々と勉強になりました。ご指導有り難うございました。
記:H.Kさん
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